2016 Fiscal Year Annual Research Report
Water like polyamorphism in a monoatomic potential model: liquid-liquid transition and glassy dynamics
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
16H00829
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金 鋼 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20442527)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 水型液体 / 液液転移 / 分子シミュレーション / ガラス転移 / 異常液体 / 遅いダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
異常液体の代表物質である水では、その密度が4℃で最大となり温度低下とともに減少する。それ以外にも比熱や圧縮率など熱力学性質や拡散係数といった動力学性質、構造エントロピーにも異常性が見られる。これら水の異常性は特に低温で過冷却された状態で顕著となる。低温で隣接する水分子同士が水素結合によって四面体構造を作りやすいという構造的な性質に起因して異常性がもたらされると考えられるが、それだけでは全ての異常性を説明することはできないとされる。一方で、低温で低密度と高密度の2つの液相に相分離する臨界点が存在するという液液臨界点仮説が現在盛んに研究されている。しかしながら液液転移が存在すると考えられる過冷却領域は水が自発的に結晶化してしまう領域であり、実験で直接観測することができない。したがってシミュレーションによって液液転移の存在を検証する研究が有効な手段となる。水の水素結合を粗視化した単成分・球対称なcore-softenedポテンシャルによって液液転移が起こることが明らかになりつつあり、水の液液転移の本質に迫ろうとするのが本研究課題の目指すところである。特にcore-softenedポテンシャルのひとつに分類されるFermi-Jaglaポテンシャルを用いて分子シミュレーションをおこない、熱力学および動力学の異常性について調べたところ、圧力-温度相図上に液液転移点を出発点として密度、粘性係数、拡散係数、構造エントロピーの順番で異常性が階層的に存在していた。このような階層的に発生する異常性は水でも見られており、core-softenedポテンシャルが水の異常性を再現するミニマムモデルであることを見出している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水型液体の液液転移を再現する粗視化モデルであるFermi-Jaglaポテンシャルに対して分子シミュレーションをおこない、密度、拡散係数、粘性率、過剰エントロピーの密度・温度依存性を定量化した。相図上で熱力学的および動力学的な異常性を特徴付けると、液液転移点を出発点として階層性を成していることを明らかにする結果を得ている。またシリコン、ゲルマニウムなど他の異常液体と共通したものであることを明らかにしている。これらの成果について現在投稿論文を執筆中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、core-softenedポテンシャルと呼ばれるモデル群のひとつであるFermi-Jaglaモデルが水型液体の液液転移とそれに伴う異常性を説明しうるモデルであることがわかった。しかしながら、ポテンシャルを決める長さスケール、エネルギースケールのわずかな違いによって、液液転移点と液液共存線の傾きが劇的に変わることが予想され、これを本年度の研究によって明らかにすることを目指す。
|