2016 Fiscal Year Annual Research Report
Structural Formation, Dynamical Behavior, and Spectra of Complex Interaction Systems of Water, Ions, and Biomolecules
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
16H00832
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳥居 肇 静岡大学, 教育学部, 教授 (80242098)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水 / 生体関連分子 / 分子間相互作用 / ダイナミクス / スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
凝縮相系(生体分子系を含む)における,比較的大きい部分電荷をもつ原子間の相互作用により形成される構造と,それに関係するダイナミクスには,多くの興味が持たれているが,スペクトル形状との関係について,しばしば論争となる状態であり,スペクトル解析のための理論的基盤の改良を続行する必要がある。ここには,系のダイナミクス自体に由来する低振動数領域のスペクトル(THzスペクトルなど)と,構造形成・ダイナミクスを反映した様相を示す高振動数領域のスペクトルが含まれる。本研究では,そのような問題意識のもとに,理論的研究を進める。 平成28年度には,以下のことを行った。(A)さまざまな金属イオンと数分子のアミド化合物から成る系のアミドIモードについて,スペクトル上の特徴を解析し,リチウムイオン電池電解液の溶媒の場合と類似していることを確認した。これは,生体分子系のスペクトルの解析に繋がる結果である。(B)低障壁水素結合系を対象としたテラヘルツ分光の解析のための基礎的知見として,生体関連の基本分子の1種であるホルムアミドの30分子から成るクラスターを対象とした解析を実施し,分子のダイナミクスに伴う水素結合長の変調による分子間電荷フラックスの生成メカニズムを明らかにした。その上で,液体ホルムアミドのTHzスペクトルのシミュレーションを行い,強度の起源を明らかにした。また,以前に解析対象とした水の場合との比較から,構造上の特徴とスペクトルの相関を解明した。類似のメカニズムは,ペプチド鎖の振動に関わる赤外強度の増減においても重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体関連の基本分子における「分子のダイナミクスに伴う水素結合長の変調による分子間電荷フラックスの生成メカニズム」を解明することができ,これは今後の研究の進展に重要な知見であることから,「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,「金属イオン周囲の構造形成とスペクトル上の特徴の関係性の解明」「低障壁水素結合に関わる電子構造とテラヘルツ分光での観測可能性の解析」について,さらに解析を進める。平成28年度に得られた知見に基づいて,複合的な観点から解析を進める。「溶液中における金属イオン周囲の分子のダイナミクスに関するテラヘルツスペクトル形状の解析」についても解析を進める。また,領域内の共同研究で,アミドIモードのスペクトル上の特徴と類似したものが他の系に存在することが明らかになってきたので,その点についても解析を進めることとする。
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