2016 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理分子動力学法による界面のシミュレーション
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
16H00835
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大戸 達彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90717761)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 第一原理分子動力学法 / 気液界面 / 和周波発生分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に挙げた主に3つの実績について概要を示す。 1.TMAO水溶液・空気界面のシミュレーション:浸透圧調整物質として知られるトリメチルアミンオキサイド(TMAO)の水溶液と空気の界面について第一原理計算分子動力学シミュレーションを行った。得られたSFGスペクトルは実験とよく一致し、メチル基の対称伸縮振動に由来する強い負のピークが見られた。TMAOのメチル基は空気側に、酸素は水側に存在し、このような小さい分子でも疎水部・親水部の違いが現れることが明らかになった。 2.イオン液体・空気界面のシミュレーション:空気に接した室温のイオン液体(RTIL)は、界面から10Å程度のスケールでアニオンとカチオンの密度が交互に極大を持つような層状の構造を持つことが知られているが、この層状構造の起源については決着がついていない。今回、古典力場を用いたMDに加えて第一原理MDを行うことで、電子反発よりはカチオンのπ+-π+相互作用が層状構造に大きな影響を与えることを明らかにした。 3.分子ワイヤの移動度の計算:A03寺尾グループとの共同研究として、被覆型有機金属ワイヤのホール移動度を求めることに取り組み、計算の幅を広げることができた。被覆型有機分子ワイヤーは、被覆する前に比べてワイヤー間の相互作用が制限されるため、高い移動度を示す。そこに金属を導入することで新たな光物性や還元特性の発現が期待されるが、金属の挿入がキャリアの移動度について与える影響については明らかになっていなかった。有機分子ワイヤに金属を導入することで、移動度を下げる、あるいは保つ機構を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリメチルアミンオキサイド(TMAO)・水/空気界面においてCH伸縮振動のSFGスペクトルを計算し、TMAOの配向を決定することは当初の計画に含まれていたが、それを計画通り達成した。加えて、TMAOに関するperspective記事を一本出版することができた。領域内共同研究に関する論文も一本出版できており、総合的には順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書に記したグラフェン・水界面のシミュレーションを引き続き進め、解析を行う。 また、今年度の領域会議をきっかけにA01班内での共同研究が発足した。これについても、最終年度内の論文投稿を目指す。
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Research Products
(7 results)