2016 Fiscal Year Annual Research Report
柔らかなタンパク質反応場の論理設計に基づく高活性な金属酵素の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
16H00837
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大洞 光司 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10631202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酵素 / 蛋白質 / 分子動力学計算 / ヘム / 立体選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、柔らかな反応場であるタンパク質マトリクスと高活性な金属錯体から構成される人工金属酵素について、その論理的設計に関する革新的かつ実用的な手法を創出し、実験化学的に示す。 具体的には、生体内で様々な転移反応を触媒するビタミンB12依存酵素の反応性を単純なヘムタンパク質で再現し、詳細に解析する。活性中心に反応性の高いポルフィリン類縁体の金属錯体を用い、ヘムポケット内における反応性および構造を詳細に評価する。アルキル錯体を形成する活性中心を錯体化学の知見に基づいて構築し、タンパク質マトリクスを理論計算により設計し、高い活性を示す人工金属酵素の実現をめざす。 本年度は、特に人工金属酵素調製法の確立とその詳細な同定を実施した。反応場を与えるタンパク質として、扱いの容易な酸素貯蔵ヘムタンパク質であるミオグロビンを選択、調製・精製した。一方で、活性中心になる人工補因子として、ヘムの配位子部分であるポルフィリンの類縁体、コリンやオキサポルフィリンの金属錯体を新規に設計・合成した。 金属には、貴金属ではないコバルトやニッケルを用いた。ヘムタンパク質補因子置換法(再構成法)に基づき、ミオグロビンからヘムを除去し、人工補因子を挿入し、これらの複合化を調製した。サイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、可視紫外吸収スペクトルや電子スピン共鳴法(EPR)を用いて同定した。還元剤により一価種が生成することをEPR法により確認し、アルキル化剤との反応性評価を実施した。また異性化反応の評価を実施し、反応機構を考察しながら、高活性な人工酵素開発に関する重要な知見を得た。上記の研究成果は学会や学術論文として発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、柔らかな反応場であるタンパク質マトリクスと高活性な金属錯体から構成される人工金属酵素について、その論理的設計に関する革新的かつ実用的な手法を創出し、実験化学的に示すことを目標としている。 本年度は、特に人工金属酵素調製法の確立とその詳細な同定に重点を置いて実験を行った。ミオグロビンを反応場を与えるタンパク質として、選択し、その機能改変を実施した。活性中心になる人工補因子として、ヘムの配位子部分であるポルフィリンの類縁体、コリンやオキサポルフィリンの金属錯体を新規に設計・合成し、これらのコバルトやニッケル錯体の調製に成功している。ヘムタンパク質補因子置換法(再構成法)に基づき、ミオグロビンからヘムを除去し、人工補因子を挿入し、これらの複合化を試み、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製し、可視紫外吸収スペクトルや電子スピン共鳴法(EPR)を用いて目的の人工蛋白質が調製できていることを確認した。特筆すべきことに、本来は生成しにくい一価種が比較的弱い還元剤により生成することをEPR法により確認し、さらにアルキル化剤との反応が進行することを確認している。また予備的ではあるが、異性化反応の評価を実施し、反応機構を考察しながら、高活性な人工酵素開発に関する重要な知見を得た。上記のように、研究計画に基づいておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度に実施した人工金属酵素の調製とその同定に基づき、論理的な活性中心の作り込みと反応の評価を実施する。反応場を与えるタンパク質として従来より用いてきたミオグロビンとその変異体に加えて、金属錯体の配位環境が大きく異なる西洋ワサビペルオキシダーゼを用いる。特に本年度調製したコバルト錯体を含む人工酵素ではメチル基転移反応および1,2異性化反応をターゲットとする。ニッケル錯体ではメタン発生反応を実施し、より難度の高い基質(メチオニン等)からのメタン発生を検討する。錯体には電子供与基や電子求引基の導入により反応性の微調整を行い、分子動力学計算に基づく、タンパク質反応場の作り込みを実施する。各種分光測定やクロマトグラフィ測定を実施し、結果に基づいて反応機構や機序を考察しながら高活性化を試みる。
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Research Products
(12 results)