2016 Fiscal Year Annual Research Report
Investigating protein behaviours in cultured human cells by paramagnetic in-cell NMR
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
16H00847
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
伊藤 隆 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (80261147)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | in-cell NMR / 常磁性NMR / 蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト培養細胞を用いたin-cell NMR実験は,外部から導入した安定同位体標識蛋白質の細胞内濃度やNMR試料管中の細胞寿命の問題などから,測定感度が低いという問題が避けられない.このような状況では通常のNOEを用いた蛋白質の立体構造情報の取得は極めて困難であるため,ランタノイド(Ln3+)結合タグで化学修飾を行い,感度の良い2D 異種核相関NMRスペクトルで観測される常磁性擬コンタクトシフト(PCS)情報の有用性が注目されている.2016年度は,新たにデザインしたLn3+結合タグ(M8-CAM-I)が,ヒト培養細胞中のin-cell PCS測定に対して有用であることを示した.また,これに加えて,従来よりもずっと低い細胞内濃度の蛋白質に適用可能な新しいNMR解析,立体構造計算法を確立した. 立体選択的に導入された8か所のメチル基を持つDOTA骨格を用い,還元的環境下で安定なカルバミドメチル基で蛋白質とカップリングするようにデザインされた,新しいLn3+結合タグ(M8-CAM-I)を合成した.M8-CAM-Iは,Ln3+に対する非常に高い親和性と,低い細胞毒性,細胞内環境での安定性を持っていた.M8-CAM-Iでユビキチンを修飾し,電気穿孔法でHeLa細胞に導入した結果,主鎖N-Hシグナルについて大きなPCSが観測された.このことは,M8-CAM-Iを用いることで,ヒト培養細胞中の蛋白質の立体構造,ドメイン間相対配置,蛋白質間相互作用などの解析のための立体構造情報の取得が可能になったことを意味している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しいLn3+結合タグ(M8-CAM-I)の合成に成功し,ヒト培養細胞HeLaを用いた常磁性in-cell NMR測定に成功した.M8-CAM-Iは,予想通り,細胞内の解析に要求されるLn3+に対する非常に高い親和性,低い細胞毒性,細胞内環境での安定性を併せ持っていた.このLn3+結合タグを導入した蛋白質についての,(1)細胞内での構造情報取得,(2)細胞内ドメイン間相対配置決定,(3)細胞内蛋白質間相互作用の同定も,モデル試料を用いて研究が進んでいる.また,M8-CAM-Iをさらに改良したタグ(クリック反応を利用)の設計と合成も進めており,予備的な結果も出始めている. 以上のことから,H28に計画していた研究は順調に推移しており,また新しいタグ合成についても成果が出てきていると言える.したがって,研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は,前年度の研究を継続し,(1)常磁性in-cell NMRを用いたHeLa細胞内蛋白質の構造解析,(2)常磁性in-cell NMRを用いたHeLa細胞内マルチドメイン蛋白質の構造解析,(3)常磁性in-cell NMRを用いたHeLa細胞内の蛋白質間相互作用の解析.を進める. (1)については,構造情報取得の高度化と構造解析法の改良を行う.特に,様々な部位特異的標識による多様なPCS/PRE情報の取得,立体構造計算法の改良,などを重点的に進める. (2)については,ドメイン選択的標識について.様々な方法を並行して検討し,最適な方法を選択することで取り組む.H29年度は,蛋白質の活性発現機構解明を直接寄与できるような(生物学的に重要な)情報の取得にも挑戦する. (3)については,c-Ha-Ras(1-171)蛋白質とその相互作用因子の相互作用をモデル系として研究を継続しる.2種の蛋白質を独立に細胞に導入する点では細胞の生存率の問題等,解決すべき課題があり,最適化を行うことで解決する.
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Research Products
(8 results)