2016 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノのCP対称性の破れから探るフレーバーの対称性
Publicly Offered Research
Project Area | Unification and Development of the Neutrino Science Frontier |
Project/Area Number |
16H00862
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
谷本 盛光 新潟大学, 自然科学系, フェロー (90108366)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニュートリノ振動 / CP対称性の破れ / フレーバー対称性 / 宇宙のバリオン生成 / レプトジェネシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ニュートリノのCP対称性を破るディラック位相をフレーバー対称性の理論に基づいて求める手法を確立すること、それをもとに、フレーバー対称性の証拠をつかむことである。さらに、宇宙の物質を生成するレプトジェネシス機構のソースとなるCP対称性の破れとニュートリノ振動におけるCP対称性の破れとの関係を明らかにすること、そしてニュートリノとクォークのCP対称性を破る位相の関係を解明することである。28年度の成果は以下の2点にまとめられる。 (1)ニュートリノのCP対称性を予言するため、荷電レプトン質量行列と右巻マヨラナ質量行列を対角化したベースにとり、ディラックニュートリノ質量行列要素に最大限の0をおくことによって、パラメータ数を減らす手法を導入した。シーソー機構を用いた後、独立なパラメータの数は7つとなり、既知の5つの実験データをインプットすることで、CP対称性の破れについて予言力を高めた。結果として、CP対称性の破れの大きさであるディラック位相の最近の実験値と矛盾ない値が得られた。この手法によるディラックニュートリノ質量行列とレプトジェ二シス機構を合わせ用いて、宇宙のバリオン生成、とりわけ符号を議論することが出来ることを示した。 (2)これまでの実験値を良く再現しているニュートリノ質量行列のモデル、Fukugita-Tanimoto-Yanagida質量行列は、二つのCP位相を持つ。ニュートリノ振動の5つの実験データをインプットすることにより、CPの破れを示すディラック位相の大きさ予言した。この予言値は限定された範囲にあり、厳密なモデルのテストが可能になることを明らかにした。もし、将来の実験での測定値が予言値より大きくずれる場合は、モデルを拡張しあらたなCP位相が必要となること、そして宇宙のバリオン生成のソースとなるCP対称性の破れが実現することを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ニュートリノのCP対称性を破るディラック位相をフレーバー対称性の理論に基づいて求める手法を確立すること、それをもとに、フレーバー対称性の証拠をつかむことである。さらに、宇宙の物質を生成するレプトジェネシス機構のソースとなるCP対称性の破れとニュートリノ振動におけるCP対称性の破れとの関係を明らかにすること、そしてニュートリノとクォークのCP対称性を破る位相の関係を解明することである。 上述の成果として論文を3件出版し、海外の国際会議の招待講演3件、国内のワークショップに招待講演1件があり、それらの成果は注目されてきている。 とりわけ、ニュートリノのCP対称性の破れを予言するため、荷電レプトン質量行列、右巻マヨラナ質量行列を対角化したベースにとり、ディラックニュートリノ質量行列要素に最大限の0をおくことによって、パラメータ数を減らす手法は、モデルの予言力を高めたこと、また、レプトジェネシス機構を合わせ用いて、宇宙のバリオン生成、とりわけその符号を議論することが出来ることを示したことは特筆すべきことである。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュートリノのCP対称性の破れを示すディラック位相がゼロでない可能性がT2KやNOvAなどの実験から強く示唆されはじめた。この最新データをもとにニュートリノの質量行列のフレーバー構造を決定し、フレーバー対称性の手掛かりをつかむ。そのため、これまで、離散対称性に基づいた数多くのフレーバーモデルが提唱されているが、長基線ニュートリノ振動実験および原子炉ニュートリノ実験のデータをもとにして、フレーバーモデルの検討・評価を系統的に行う。それによって有望なフレーバー対称性を選択した上で、CP対称性を破る位相を理論的に求める。その結果を長基線ニュートリノ振動実験データを用いて精査し、フレーバー対称性の可能性を明らかにする。フレーバー対称性から得られたマヨラナ位相とともに、フレーバー対称性からニュートリノ質量の和則を求め、ニュートリノ質量の絶対値を予測した上で、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の大きさを予言する。 計画は最終年度にはいるため、これまでの研究成果をまとめる。
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