2016 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ酸化障壁を用いたTHz帯電磁波検出用窒化物超伝導接合の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Unification and Development of the Neutrino Science Frontier |
Project/Area Number |
16H00866
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
赤池 宏之 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20273287)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 / 超伝導材料・素子 / 窒化物超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、窒化物超伝導体を用いたトンネル接合の障壁層として窒化物との反応性が低いことが予想されるハフニウム(Hf)に着目し、Hf酸化膜を用いた窒化物超伝導トンネル接合検出器の開発を行うことを目的としている。 平成28年度は、これまでに構築した接合作製プロセスに基づき、窒化物超伝導体NbTiNを用いたHfOx障壁を持つトンネル接合を作製した。まずは、ラジカル酸化によるHfOx障壁を用いた。4.2Kにおける電流-電圧特性の評価の結果、サブギャップ電圧領域内の1mV程度以下の小さな電圧領域のみサブギャップリーク電流を小さく抑えることができたが、1mV以上ではリーク電流が急激に増大する特性となった。また、4mV程度のギャップ電圧近傍においても、電圧遷移幅が非常に大きくなった。一方、従来の熱酸化によるHfOx障壁を用いた接合では、サブギャップ領域において、リーク電流はラジカル酸化障壁に比べて大きいものの、電圧遷移幅は小さかった。そこで、熱酸化HfOx障壁を持つ接合を中心として、サブギャップリーク電流の低減を試みた。着目したのは、障壁層となるHf薄膜の性質である。成膜条件の制御・調整により、4Kでの抵抗率を従来の薄膜の2/3程度に小さくしたものを用いて接合を作製、評価した。その結果、最も薄いものでHf膜厚2nmまで、サブギャップリーク電流の大きな低減が見られ、接合特性の改善に成功した。これは、原子間力顕微鏡による表面平坦性の評価から、高抵抗率Hf膜は下部NbTiN電極表面の凹凸を平坦にするように被覆するのに対し、低抵抗率Hf膜は下部NbTiN電極表面を良好に被覆し、膜厚の均一なHfOx障壁層が形成されたことによるものと思われる。一方、ギャップ電圧における立上りの部分に丸みが残っており、この原因について29年度に調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抵抗率の小さなHf層を用いることにより、熱酸化HfOxトンネル障壁によるサブギャップリーク電流の小さな超伝導トンネル接合の作製に成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
ギャップ電圧における立上りの部分の改善に向け、トンネル障壁層及び超伝導電極層に着目して検討を行う。ギャップ電圧近傍の特性はトンネル障壁層近傍の超伝導電極内エネルギーギャップの分布を反映していると考えられる。これは、NbTiN/Hf界面の乱れや原子の拡散によるものや、あるいは超伝導層そのものの特性に分布が生じている可能性を示唆している。そこで、下部超伝導層にエピタキシャル膜を用いたり、NbNなどの窒化物超伝導体を用いたりして効果を調べる。以上のことから、サブギャップリーク電流が小さく角型性の優れた準粒子トンネル特性を持つ接合を実現する。また、本トンネル接合の検出器への応用を検討する。
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