2016 Fiscal Year Annual Research Report
原子核乾板ハイブリッド検出器によるニュートリノ反応断面積の精密測定
Publicly Offered Research
Project Area | Unification and Development of the Neutrino Science Frontier |
Project/Area Number |
16H00873
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小川 了 東邦大学, 理学部, 教授 (10256761)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 原子核乾板 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核乾板検出器を用いた短基線ニュートリノ振動実験として、2014年10月にJ-PARCのニュートリノ実験施設における原子核乾板検出器の照射実験を実験計画諮問委員会(PAC)に申請を行い、T60実験として採択された。2014年度の2kgの鉄を標的としたニュートリノビーム照射実験に続き、2015年度にかけて1.5kgの水と鉄を標的としたECCを新たに製作し、2015年5月よりニュートリノビームの照射実験を行った。このデータは現在解析中で、ニュートリノの水反応を観測できる予定である。水反応の解析状況は、松尾により2016年秋の物理学会で報告された。 鉄60標的のECCを用いて2016年2月から5月までニュートリノビーム照射実験を行い、日本大学における現像作業を経て、名古屋大学において飛跡の読み出しを行った。現像作業および解析状況について物理学会において報告を行った。現在飛跡のデータの解析中である。この照射実験では、数千個のニュートリノ反応の検出が期待され、ニュートリノ鉄反応断面積に関する詳細解析が可能である。 2016年度は、研究補助員の森元と大学院生の大島が中心となって、東邦大学グループとして、名古屋大学の高速飛跡読み取り装置(HTS)を用いて、原子核乾板フィルム上の飛跡の読み取りを行った。各ECCモジュール中の飛跡の再構成とニュートリノ反応事象候補である飛跡収束点(Vetex)の検出は良好に行われている。各ECC間および多段シフター飛跡、さらにINGRID中の飛跡との接続作業が現在進行中である。展望および解析の状況は研究会において小川が報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、2016年2月から5月までニュートリノビーム照射を行った60kg鉄標的ECCモジュールのニュートリノ反応事象解析を推進している。飛跡の再構成は、ほぼオンラインで可能であり全モジュールに関して飛跡の取得が終了している。ニュートリノ反応事象候補は、飛跡の収束点(Vertex)を再構成する手法で、3本以上の飛跡を伴う、およそ1000事象が抽出されている。ニュートリノ鉄反応断面積の解析のためは、飛跡が1本および2本の反応事象の抽出が必要不可欠であるが、現在のところ飛跡の収束による検出ではバックグラウンドを十分に取り除けないのが現状である。ニュートリノ鉄反応断面積の解析のためにミュー型ニュートリノの荷電カレント反応に着目するのが一つの方法であるが、ミュー粒子飛跡の再構成のためには、各ECC間および多段シフター飛跡、さらにINGRID中の飛跡との接続作業が必要となる。このために、現在解析は、各検出器間の飛跡の接続に注力している。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュートリノ鉄反応断面積の解析には、飛跡が1本および2本からなるニュートリノ反応点の検出が不可欠である。多段シフター飛跡の再構成は、検出精度や効率が未確認であり、反応断面積の解析には不十分である可能性がある。飛跡が1本および2本からなるニュートリノ反応点の抽出は、バックグラウンドの混入により困難な状況であるが、それらをECC中で除去することにより、ECC単体でのミュー粒子の同定が可能になる。これによるミュー型ニュートリノ荷電カレント反応の解析を試みる。また、電子型ニュートリノの反応が数十事象ECC中に期待される。これにはECC中に電子の飛跡を検出する必要があり、これも並行して解析を進める。ミュー型から電子型へのニュートリノ振動解析を行うためには、電子事象の検出が必要不可欠である。
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