2016 Fiscal Year Annual Research Report
アトムプローブと走査トンネル顕微鏡による材料内部の原子配列の完全な決定
Publicly Offered Research
Project Area | Exploration of nanostructure-property relationships for materials innovation |
Project/Area Number |
16H00887
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒川 修 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90303859)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2018-03-31
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Keywords | 3次元アトムプローブ / 走査トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
3次元アトムプローブ(3-dimensional atom probe:3DAP)は電界蒸発現象を利用し,試料内部の組成分布に関する3次元情報を得る解析手法であり,サブナノメートルの空間分解能が得られる.しかしながら,対象によっては空間分解能が十分でない場合がある.また,より深刻な問題として,試料表面のナノスケールの凹凸により電界蒸発したイオンの軌道が歪むことで,原子配置の再構成時に大きな誤差が生じる現象が知られている.このようなナノスケールの凹凸は例えば蒸発電界の異なる微細な析出物が存在している場合に生じる.走査トンネル顕微鏡(Scanning tunneling Microscopy :STM)は表面を探針で“なぞる”ことによって非常に高い空間分解能が得られる手法である.透過像ではない真の原子分解能が得られる利点があるが,元素識別能力が全くないという大きな欠点がある. 本研究ではこのような相補的な特徴を持つ3DAPとSTMを併用し,より精密な材料の組織観察が行える手法の開発を行った. 克服すべき技術的な課題として,STM探針の3DAP試料への誘導の問題が挙げられる.3DAP試料の大きさは最大でも100nm程度であり,通常STMにはその精度で探針を試料に誘導する機能が無い.今回はこの問題を表面に多数の探針を作りこむことで,どこにでも探針が存在する状態を作り出し,誘導の必要をなくすことで解決した.具体的にはSi(001)の異方性エッチングを利用したSiピラミッドをSTM探針として利用した. このほかいくつかの技術的課題を解決することで,テスト試料であるW(タングステン)およびTiO2試料に関して,同一試料の3次元アトムプローブおよびSTM観察を行うことに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で提案の計測手法のもっとも重要な部分である,”誘導無で3次元アトムプローブ試料の先端部をSTMで観察すること”が可能であることを証明できた.特に,FIB(収束イオンビーム)で試料切だし・先鋭化を行ったいわゆるLift-out法で作成した試料に対して,STM観察が可能であることを証明できたことは,今後実際に興味ある試料の観察を行うことを考えた場合に重要である. STM観察の空間分解能に関しては,ナノスケールの形状をとらえるところまで可能になっており,このデータは原理的には電界蒸発の不均一の補正に使用可能なものである. 一方,最終的にはSTMにおいて原子分解能を得ることが目標であり,この目標の達成が今後の課題となる.
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Strategy for Future Research Activity |
前項で述べたように本手法で原子分解能のSTM観察が可能になれば他の手法では得られない局所的な微細組織の情報が得られることとなり,これが本研究の最終目標となる.前年度は測定法のコンセプトを証明するためにより簡単に作製可能な異方性エッチングを利用したSi(001)表面上に形成されたピラミッドをSTM探針として使用したが,本年度は研究計画にあるとおりPt/W(111)ピラミッドを使用してより高空間分解能のSTM観察を行う.また今回の試料はSTM試料としては比較的凹凸の大きな試料となるため,探針位置制御のためのフィードバック制御の追従性能を改善する必要があり,フィードフォワード制御の導入を検討する.また当初計画にあるように,表面の酸化・汚染を防ぎつつ試料を3次元アトムプローブ装置からSTM装置に移動させるためのトランスファーベッセルの作製を行う.これらを通して計画どおりMg-LPSO構造等,実際に興味ある試料の測定を試みる.
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Research Products
(3 results)