2016 Fiscal Year Annual Research Report
折りたたみグラフェンを利用した階段型磁場中の二次元電子系の電気伝導の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
16H00896
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塚 洋一 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (50126009)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グラフェン / 二次元電子系 / 不均一磁場 / ホール効果 / 磁気抵抗効果 / 超伝導 / 谷間散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
薄い絶縁膜をスペーサーとして、その端で折り返した「折り畳みグラフェン」に垂直強磁場を加え、軌道運動に対する有効磁場が極めて急峻に変化する状況での電気伝導を調べることを目的としている。銅箔上に成長したCVDグラフェンを出発材料とし、試料を損ねることなく銅箔を除去し、絶縁スペーサーを挟んで折り畳み、さらにその両面に複数の電極を取り付けることが必要であり、その手法の開発にあたった。申請段階で構想した方法ではうまくいかないことが判明し、いくつかの方法を試みた結果、第1年度終了時点では、3μmのSU-8上のグラフェンの折り畳みに成功している。ただし、グラフェンへの電極の取り付けおよびグラフェンの質の劣化にまだ問題があり、更に改良が必要である。 金属修飾したCVDグラフェンの電気伝導に関しては、極微量のニッケルを蒸着したグラフェンの磁気抵抗を極低温で調べた。試料は数10mT 以下の弱磁場で負の磁気抵抗を、高磁場では正磁気抵抗をそれぞれ示し、弱局在効果によって概ね理解することができる。McCannらの理論式へのフィッティングによって位相緩和時間、谷間散乱時間を評価し、Niの付加によって谷間散乱の増大の傾向が認められた。 インジウムを10nm程度蒸着したグラフェンでは島状Inがグラフェンを介して結合し、ランダムな2次元超伝導ネットワークを形成する。この試料の電気抵抗を極低温で調べ、その温度変化からこの系の超伝導転移がBKT転移で理解できることを示した。さらに電界効果とプラズマ処理によって島間結合を制御することによって、BKT転移温度の低下と超伝導・絶縁体転移を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CVDグラフェンの折り畳みプロセス開発中に、基板である銅フォイルを除去するとCVDグラフェンが平面性を保たず分散してしまうことが判明した。折り畳みグラフェンの作製は本研究の根幹であり、この分散を回避しつつ折り畳む方法を検討しなければならなかった。工夫と試行錯誤を繰り返しようやく折り畳みグラフェンを得るまでに至ったが、当初予定よりやや時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
グラフェンの折り畳みには成功している。グラフェンへの電極の取り付けの成功率がまだ低く、室温では導通があっても低温では絶縁化するケースが多い。金電極との密着度を上げるための方策を考えるとともに、他の方法も探る。グラフェンの質の劣化もまた問題であるので、ダメージの少ないプロセスを考えるとともに、散乱やキャリアドーピングの観点でレジストや基板の影響も評価する必要がある。
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