2016 Fiscal Year Annual Research Report
ポルフィリンナノリボンの創製と物性評価
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
16H00909
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 隆行 京都大学, 理学研究科, 助教 (20705446)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポルフィリン / コロール / 金属錯体 / ジラジカル / 脱水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属基盤上でのアルキル置換ポルフィリンの脱水素化反応では、アルキル基の融合が見られるのみで、目的とするナノリボンは得られなかった。9-ブロモアントラセン置換ポルフィリンでは、アントラセンーポルフィリンハイブリッド二量体の構造が確認できたが、それに加えて、五員環と七員環構造が縮合したような、目的とは直交した方向への縮合二量体が見出された。これは全く予想外の生成物であり、グラフェンの伸長におけるエッジ効果を示す例としても興味深い。前駆体の9-ブロモアントラセン置換ポルフィリンの種々の金属錯体の合成にも成功したため、錯体の構造の違いに伴う脱水素化反応の選択性の違いを調査する準備も整った。 また、新型原子層の候補として、環縮小ポルフィリンであるコロールの開拓も進めた。メゾーメゾ結合コロール二量体の酸化的縮環反応により、コロールテープを合成した。コロールテープ合成では、無金属体を低濃度で酸化させる手法が有効であることがわかったが、コバルト・ガリウム・銀・鉄・銅といった金属錯体に変換してからの酸化反応では合成できなかった。一度コロールテープを合成したら、亜鉛・銅錯体の合成が可能であった。また、コロールテープは二電子還元が可能で、水素化ホウ素ナトリウムによる還元で、18パイ芳香族性が回復した還元型コロールテープに変換ができた。この還元型は空気中で速やかに酸化されてしまうが、酸化される前に三塩化ガリウムを反応させることでガリウム錯体を合成できた。X線結晶構造解析の結果から、このガリウム錯体はガリウムー酸素ーガリウム結合をもつ対面型二量体であることがわかり、またESRや磁化率測定の結果からこの分子はシングレットジラジカル性があることが明らかになった。同様の対面型二量体は、新しく合成したコロールケイ素錯体からも合成が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポルフィリンナノリボンの創製を目指し、金属基盤上での脱水素縮合反応をおこなった。原子層の種となるポルフィリン前駆体を種々検討したところ、アントラセン置換ポルフィリン前駆体からの合成において、当初予定していたアントラセン同士の縮合だけでなく、アントラセンとポルフィリンが縮合したような二次元層状物質が確認された。今後ポルフィリン環内の金属による効果や、周辺置換基の微調整によりこの二次元層状物質の効率的合成に期待できる。 また、新型原子層としてコロールテープを開拓した。コロールテープのガリウム錯体において、ガリウムー酸素結合を用いた対面型二量体が、著しく湾曲した構造を有し、その湾曲構造に伴ってシングレットジラジカル性が発現することが明らかとなった。 このように、当初期待していた現象とは異なる現象が次々と見出され、それらの結果を解明するためのデータも集まっているが、一方で当初目的であるポルフィリンナノリボンの創製に向けてのブレークスルーはまだ見出せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
予想外の結果が得られた新規ポルフィリンナノリボンおよび対面型コロール二量体の研究を進める。ナノリボン合成では、ポルフィリンの中心金属や置換基の効果を調べ、新型原子層の合成条件を調べると同時に、より長いナノリボンが合成可能な前駆体モチーフと反応条件を調査する。ポルフィリンに限らず、同手法を用いたグラフェンナノリボン類の合成にも挑戦する。 対面型コロール二量体の物性を、詳細な磁化率測定やESR測定、分子軌道計算によって解明する。現時点ではシングレットジラジカル性が、分子の湾曲によって発現していると考えており、今後湾曲のないモデル分子を合成して物性を比較したり、分子に対して構造変化を促すようなマクロな力を与えてラジカル性の発現が示唆されるスペクトル変化が見られないかを検討する。新しく合成したコロールケイ素錯体についても、ケイ素上の化学反応性を調査したり、対面型二量体の光物性を詳細に調べる。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Triply-linked Corrole Dimers2016
Author(s)
Shota Ooi, Takayuki Tanaka, Kyu Hyung Park, Dongho Kim, and Atsuhiro Osuka
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Journal Title
Angewandte Chemie International Edition
Volume: 55
Pages: 6535-6539
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Triply Linked Corrole Dimers2016
Author(s)
Shota Ooi, Takayuki Tanaka, Atsuhiro Osuka
Organizer
9th International Symposium on Porphyrins and Phthalocyanines (ICPP9)
Place of Presentation
Nanjing, China
Year and Date
2016-07-03 – 2016-07-09
Int'l Joint Research