2016 Fiscal Year Annual Research Report
電界効果近接場分光による遷移金属カルコゲナイドの局所光物性解明と構造制御
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
16H00919
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
柳 和宏 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30415757)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子層 / 近接場分光 / 電界効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属カルコゲナイド(TMDC)の単層試料やヘテロ接合試料は、基礎科学・応用の両面から、極めて活発に研究がされている。最近では、MoS2やWSe2において2H構造(半導体相)と1T構造(金属相)間の転移がドーピング・アニーリングにより制御可能であることが報告されている。単一光子発生や非線形光学現象などTMDCにおける興味深い光物性は、構造欠陥・グレインバウンダリ(GB)・接合界面といった特異な局所構造において特に見られ、その詳細な理解が必要となっている。例えば、構造欠陥に束縛された束縛励起子は、顕著な電場応答特性を示すが、その局所構造と束縛励起子の電場応答特性の対応関係は十分に分かっていない。非線形光学現象や単一光子発生の背景を正確に理解し制御するには、局所構造と光物性・電場応答特性の関係解明は必須である。そこで本研究では、申請者の近接場分光測定技術(SNOM)に、カンチレバよりバイアス電圧を印加する機構を設け(電界効果SNOMの開発)、原子層の欠陥・GB・接合界面に存在する励起子・トリオン・束縛励起子を、回折限界を超えた空間分解能で解明し、且つ、その電界効果特性および、構造を制御する技術を開発することを目標に研究を行っている。 実際に、平成28年度において、電界効果SNOMの系の開発に成功し、単層MoS2において、局所的にキャリア注入をすることに成功し、局所光学特性の関係を明らかにした。また、電界印加を組み合わせることにより、近接場という極めて弱い光を用いても、MoS2において局所的な光化学反応が起こり、エッチングされることを見出し、ナノスケールでMoS2の構造を加工できることを明らかにした。同成果については、学会発表および学術誌(Scientific Reports 2017)へ掲載し報告を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の初年度計画では、電界効果と近接場分光とを組み合わせた測定系を開発することと、局所的なキャリア注入の実現を目標としていた。実際に、カンチレバに電界印加の系を構築し、局所的に電界を印加する系を構築することを成功した。MoS2の単層合成、導電性基板への転写、局所的な電界印加、および局所光学特性の同時測定、を実現した。局所的に電子注入制御を電界変調により行い、それに伴い、発光の変調が可能であることを明らかにした。ホール注入側においては、試料が壊れやすくなる問題があり、その背景については更に検討を進めている。電子注入制御により、発光が極大を迎える電圧の点を電荷中性点とした際、それが、MoS2試料内において極めて場所依存性があることを示した。電荷中性点の位置と、初期の発光の強度との相関を検討し、局所ドーピングレベルと発光収率の二つの性質が別々に発光プロセスに寄与していることを明らかにした。このことは当初の計画していたように、測定系の開発および試料合成・試料準備に成功し、更に、電界効果SNOMが単層MoS2の局所光学特性を解明する上で極めて有力な手法であることを示した。よって、当初の計画通りに進んでいる。 当初の計画以上に進展しているのは、近接場光というものは極めて微弱な光(nW cm-2)でも、電界効果と組み合わせることでエッチングができるということを見出した点にある。MoS2系では、レーザー強度が約μW cm-2程ではエッチングできることが知られている。近接場光はそれより3桁弱い光である為、当初はエッチングは無理であると予想していた。しかし電界効果SNOMで、局所電子注入状況を制御した上で近接場光を照射することで、エッチングが起こることを見出した。電界効果SNOMを用いて、原子層の構造制御が可能であることを初年度に示すことができた為、当初の計画以上に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、今年度は以下の研究を行う。 (1)ヘテロ接合界面における電界効果SNOM測定 近年になり、MoS2-MoSe2, WS2-MoS2などの様々なヘテロ接合・積層界面が形成可能であることが報告されている。首都大 宮田先生、九州大学 吾郷先生との連携しつつ、ヘテロ接合・積層系の試料のヘテロ接合界面における光吸収・発光・励起スペクトルをサブ100nmの分解能で明らかにし、その電界効果特性(キャリア注入特性・Stark効果)を解明する。特に、半導体・半導体接合界面の金属的性質の検証や、接合界面における励起子・トリオン・束縛励起子の電界効果特性を明らかににする。 (2)電界効果SNOMによるTMDCの構造転移制御 MoS2やWSe2、MoTe2においては、n-butyl lithium溶液による化学ドーピングやレーザー加熱により半導体型の2H相から準安定の金属型の1T相へ、更に180度のアニーリングにより1Tから2Hへの結晶相転移が可能であることが知られている(Kappera et al., Nat. Mater. 2014など)。平成28年度において、電界効果と近接場光を組み合わせることで、通常のレーザーエッチングと同様な構造加工が可能であることが分かった。そこで、本研究では、特にレーザー照射による構造相転移が知られているMoTe2系を対象に、近接場光と電界効果を組み合わせた構造制御の試みを行う。MoTe2は、新学術研究領域の上野先生より結晶を頂き、へき開法を用いて、単層及び2~3層程の試料作成技術を確立する。その後、電界効果近接場分光手法を用いて、電界効果による局所ドーピング制御と光照射により、相構造制御の研究を進める。
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Research Products
(23 results)
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[Journal Article] Disentangling Vacancy Oxidation on Metallicity-Sorted Carbon Nanotubes2016
Author(s)
D. J Mowbray, A. P. Paz, G. Ruiz-Soria, M. Sauer, P. Lacovig, M. Dalmiglio, S. Lizzit, K. Yanagi, A. Goldoni, T. Pichler, P. Ayala, A. Rubio
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Journal Title
J. Phys. Chem. C
Volume: 120
Pages: 18316-18322
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] 柳和宏2016
Author(s)
原子層における近接場分光
Organizer
WITec workshop
Place of Presentation
神奈川
Year and Date
2016-10-25 – 2016-10-25
Invited
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