2016 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物ナノシートの静電的ヘテロ接合による協奏機能発現
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
16H00922
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
谷口 貴章 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (50583415)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酸化物ナノシート / 超格子 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / グラフェン / トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる機能性を有する2枚のナノシートを静電的にヘテロ接合し、紫外線照射・アニーリング・層間カチオン交換によりナノシート間の電気的・磁気的相互作用を制御した。その中で、下記の研究結果がえられた。 MoS2ナノシートとCa2Nb3O10ナノシートの複合化: バルクや薄膜のMoS2は優れたn型半導体であり、そのナノシートは極薄チャネル層として機能する。一方、Ca2Nb3O10ナノシートは極限薄さと高誘電率(230)を兼ねた高性能ゲート絶縁層として働くことが期待される。本年度は、CVD法でSiO2/Si基板上に成長した単層MoS2上にソース-ドレイン電極を配置し、基板のSiO2層をゲート絶縁体とするボトムゲート型電界効果型トランジスタを作製した。このデバイス上にCa2Nb3O10ナノシートをLB法を用いて堆積させた2層デバイスを作製した。実験結果としてCa2Nb3O10ナノシートをMoS2に堆積させることにより、トランジスタ特性における「しきい電圧」が5V程度低電圧側にシフトし、電子がMoS2に注入されることが明らかになった。ラマン分光からも同様の電子ドーピング効果が確認された。さらに蛍光測定を行った結果、1.6eV程度に中心波長をもつエキシトン発光が1.4eV程度にシフトした。これの物性変化については検討中であるが、LB成膜後のナノシート界面にはナノシートの液相剥離に用いたカチオン性有機分子(テトラブチルアンモニウム, TBA)が存在するため、TBAとMoS2との相互作用が起源である可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では酸化物ナノシートを半導体としたFETの開発を予定していたが、検討した酸化物ナノシートの半導体としての移動度は非常に低く、デイバス応用には好適でないことが明らかになった。。そこで、半導体層としてMoS2等の遷移金属カルコゲナイドを用いることにした。これにより、酸化物ナノシートが複層原子層デバイスのブロックとしていかに機能するか実験的に検討することが可能となった。初年度は半導体層と酸化物ナノシート層の界面が重要な役割を担うことが明らかになり、研究計画で予定していた界面カチオンの交換や分解により大幅に半導体層の諸物性を制御できることが示唆された。MoS2やWSe2等、遷移金属ダイカルコゲナイド原子層はn型、p型半導体、超伝導性等、様々な物性を有しており、これらに酸化物ナノシートを堆積し、ナノシート間の相互作用を界面を通し諸物性を制御することができれば新しい人工層間物質・材料を創出することができる可能性がある。以上を根拠として、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画と初年度に得られた結果を踏まえ、以下の研究を推進する。1)電界効果型トランジスタ(FET)・・・半導体ナノシートと誘電体ナノシートの複合化、2)マルチフェロイック材料・・・強磁性体ナノシートと誘電体ナノシートの複合化、3)高温超伝導体・・・超伝導体ナノシートと誘電体ナノシートの複合化 1)では半導体として遷移金属ダイカルコゲナイドナノシート、誘電体(ゲート絶縁体)としてCa2Nb3O10ナノシートを用いる。層間静電相互作用の制御により低動作電圧/高移動度な二次元酸化物FETを開発する。2)では強磁性体としてCoドープTiO1.91ナノシート、誘電体としてCa2Nb3O10ナノシートを用いる。1)で得られる知見をベースとし、さらにナノシート間の電気・磁気交差相互作用を制御することでマルチフェロイック特性を発現させる。3)は原子層高温超伝導体の創出に向けたチャレンジである。まず、層状構造を有する酸化物高温超伝導体の単層剥離により超伝導体ナノシートを合成する。超伝導を示すナノシートが見出されれば、誘電体ナノシート(Ca2Nb3O10)とヘテロ接合し、電界チャージ注入による高Tc化を試みる。
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