2016 Fiscal Year Annual Research Report
デバイス応用に向けた2次元材料の電子物性の理論設計
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
16H00925
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
宮本 良之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター, チームリーダー (70500784)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 2次元材料 / 有効質量近似 / 層間相互作用 / 光電場増幅 / 光電場変調 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
2D材料の光電場の応答特性から、ある周波数の光電場に対してその電場の増幅とTHZ変調効果があることを第一原理シミュレーションから見出し、THZ光源デバイスの一部に2D材料を用いることを提案した。この増幅・THZ変調を起こすには励起光周波数が2D材料の励起エネルギーと共鳴条件にあることが必須であり、可視光領域よりもUV領域の共鳴周波数において、光電場の増幅・変調効果が著しいことが分かった。背景となる物理は異なる周波数に対する励起間の干渉現象であると理解される。可視光領域では、励起強度の光周波数分布が広範囲にわたっており位相干渉による緩和が早く起きるので電場増幅には至らない。一方UV領域ではエネルギー幅の狭い領域に高い励起強度が集中しており狭い領域の周波数の干渉が起きるので電場増幅の後THZ周波数での電場変調が起きているものと理解される。 また、グラフェン、ナノチューブを実用的な電子回路の一部に応用する際には、加工プロセスによってグラフェン端の終端やナノチューブの扁平化がおきることが考察される。そこで、端が閉じた2層グラフェンあるいは扁平したカーボンナノチューブに着目し、その電子状態の層間相互作用依存性を明らかにした。2層グラフェンを有効質量理論で取り扱い、2層の重なり方に依存する有効的な層間相互作用を導出した。閉じた端は有効的な境界条件により接続した1層グラフェンとして取り扱った。このような計算は、大規模な第一原理計算を実行することなくグラフェン・ナノチューブによる電子デバイス特性を予測することに有益である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までは2D材料の光吸収と共鳴する周波数の光電場特性に着目していたが、レーザー発振装置側からみた実用性を考え固定された周波数(波長に換算して800nm)を持つパルス幅50fsのレーザー電場にたいしても増強効果がみられるか検証中。現在までに2D材料では元の電場の60%以上の増幅効果があることを見出し、2D材料を筒状にしたナノチューブ構造では2倍以上の増幅効果があることを見出した。また、予備的計算により、このような光電場増強効果は、レーザー場を利用した分子分解反応を促進することも分かってきた。レーザー装置と2D材料(ナノチューブ)を組み合わせた分子分解装置の構築への提案を準備中である。光周波数が固有の励起状態と共鳴条件にない場合でも増幅がみられることは、2D材料においては材料の分極効果、さらに筒状のナノチューブにおいては分極効果に加えて局面における電界集中効果があることで理解できる。 また、端が閉じた2層グラフェンあるいは扁平したカーボンナノチューブについては、層間相互作用が重要となるアカイラルな構造の場合について詳しく調べた。すなわち、アームチェア型、ジグザグ型ナノチューブが扁平したとき層間相互作用は大きく、また2層のずれによって相互作用は大きく変化する。それに従い2層グラフェンの電子状態は半導体から金属へまた半導体へバンドギャップの開閉を伴い大きく変化する。これらの状態の上下層の波動関数は導出した境界条件によく整合し、閉じた境界の影響をほとんど受けないことを明らかにした。その結果対応する2層グラフェンのエネルギー分散関係を離散化したものとして概ね理解されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
光増幅効果を利用したデバイスアプリケーションを第一原理計算より提案する。増強された光電場による、2D材料付近の分子における光化学反応の促進の可能性や、貴金属ナノ粒子にかわる光増幅デバイスの可能性を第一原理計算によるシミュレーションで検証する。 また、連携研究者は産総研と東北大学が共同で設立した数理先端材料モデリング オープンイノベーションラボラトリに異動し、数学、理論物理による材料開発の加速を目指した研究を行っている。具体的には、複雑原子構造と電気伝導度など材料機能の相関の解明、トポロジカルによる材料特性の分類を目指した研究などを推進してゆく。
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Research Products
(8 results)