2016 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study on hydrogen catalysis mechanisms in interstellar molecular evolution
Publicly Offered Research
Project Area | Evolution of molecules in space: from interstellar clouds to proto-planetary nebulae |
Project/Area Number |
16H00932
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子分子物理 / 宇宙科学 / 化学物理 / 地球化学 / 計算化学 / 反応動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素分子は、宇宙において圧倒的に多く存在する分子であり、星間空間に存在する他のラジカルやイオンと反応して、生成物分子の中に水素原子が組み込まれていく反応試薬でもある。近年、水素分子自身が触媒として働き得ることが指摘されている。そこで、本研究では、星間分子進化過程における水素触媒反応を網羅的に探究し、その上で、典型的な反応例を取りあげて、原子の運動を量子力学的に取り扱うことができる量子反応動力学理論を適用して、その寄与を定量的に評価する方法を確立することを目的としている。 昨年度は、水素分子が触媒としてはたらく可能性が高い分子系として イオン系反応、H2NC+ H2 ->HCNH+ H2、中性反応として HNCHN + H2-> H2NCH+ H2 およびNCOH + H2 -> HNCO + H2についてGRRMコードを利用した反応経路の全面探索を行い、水素分子の触媒効果についての定性的な理解が得ることができた。しかしながら、レベルの低い電子状態計算で探索を行ったため、定量性について問題があることが分かった。そこで、本年度はまず、正確な電子状態計算に基づいて精度の高い反応経路を求めることを行う計画である。 量子反応動力学計算については、昨年度は具体的な分子系として、H3+ + H2のイオン分子反応を取りあげて、理論計算を実行したが、反応中間体の寿命が長すぎるために定量的な結果が得ることができなかった。そのため、本年度は、水素分子2個からなるクラスター分子のイオン化ダイナミクスについて量子反応動力学計算を行うことにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素分子の触媒効果についての定性的な理解が得ることができた。しかしながら、レベルの低い電子状態計算で探索を行ったため、定量性について問題がある。そこで、本年度はまず、正確な電子状態計算に基づいて精度の高い反応経路を求めることを行う計画である。 量子反応動力学計算については、反応中間体の寿命が長すぎるために定量的な結果が得ることができなかったため、水素分子2個からなるクラスター分子のイオン化ダイナミクスについて量子反応動力学計算を行うことにする。イオン化に伴いクラスター内でイオン分子反応が起きること分かっている。幸い、他の研究者がポテンシャルエネルギー曲面の開発をすでに行っているため、そのコードを我々の動力学計算コードへ取り込む。また、H/Dの同位体置換効果について詳細な計算を行う。さらに、本年度は水素分子触媒の新しい系として、固体水素表面反応について検討することも行う。これは、1個の水素分子が触媒反応を起こすことに加えて、複数の水素分子が触媒となる可能性もあるのではないかという仮説に基づいている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、引き続きGRRM法による反応経路の探索と、量子反応動力学法の応用計算を行う。また、最終年度となるため、研究総括も行う。
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