2016 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理強束縛模型によるトポロジカル物質のバルク観測量提案
Publicly Offered Research
Project Area | Frontiers of materials science spun from topology |
Project/Area Number |
16H00995
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
永井 佑紀 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究職 (20587026)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
トポロジカル超伝導候補物質であるCuxBi2Se3やSn1-xInxTe等は、トポロジカル絶縁体に電子がドープされて生じる超伝導体である。この超伝導体は特徴的なバンド構造を持つ。そのバンド構造を用いたシンプルな2軌道Dirac模型と、CuxBi2Se3を記述する強束縛模型を用いて、様々なトポロジカル超伝導における核磁気緩和率の振る舞いを理論的に調べた。その結果、異なる種類のトポロジカル超伝導は核磁気緩和率の温度依存性が異なり、実験で判別可能であることがわかった。特に、CuxBi2Se3に関して、ドーピング依存性とそれに伴うフェルミ面のトポロジー変形(三次元楕円体から二次元円筒形)についても詳細に調べた。 また、トポロジカル超伝導体における強相関効果を調べるため、動的な揺らぎを高精度に取り込める動的平均場理論を用いて、s波超伝導+ラシュバスピン軌道相互作用+ゼーマン磁場によって生じる二次元トポロジカル超伝導体の転移温度について調べた。その結果、スピン軌道相互作用が強く電子の相関効果が強い領域では、ゼーマン磁場を大きくすると転移温度が上がることがわかった。通常、ゼーマン磁場はs波超伝導体に対して不利に働くため、この結果は、スピン軌道相互作用とゼーマン磁場との協奏効果によるものである。 その他、トポロジカル超伝導体及びトポロジカル電荷密度波体における不純物効果についても調べ、非自明な準粒子励起が不純物周りに現れることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トポロジカル物質のバルク観測量提案として、核磁気緩和率に着目して研究を行った。CuBi2Se3に関してはドーピング依存性も含めてほぼ挙動について理解し、トポロジカル超伝導を核磁気緩和率測定によって検出することは可能であると言える。 一方、ドープされたBi2Se3は2回対称性のみ持つ「ネマティック超伝導体」である可能性が複数の実験によって示唆されており、こちらは当初予期できなかった。そのため、ネマティック超伝導体に関する研究も遂行する必要がある。 また、Sn1-xInxTeに関しては、第一原理強束縛模型を構築することに成功している。本年度にその模型を用いてバルク観測量提案を行う予定であったが、その多バンド性(3次元12バンド模型)によりやや難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
CuxBi2Se3に関しては、バルク観測量の提案を通じて、引き続き実験グループと協力して超伝導状態の特定を行う。上述したように、最近この物質が「ネマティック超伝導体」である可能性が実験的に示唆されており、ネマティック超伝導体であることを示すことを通じて、トポロジカル超伝導体であることを示すことができると考えられる。そこで、ネマティック超伝導体の性質を引き出すような物理量を提案することも目標の一つとする。そして、SnTeに関しては、第一原理強束縛模型を用いてトポロジカル性を検出する手段を模索する。 その他、トポロジカル超伝導体の強相関効果を調べることも引き続き行う。そして、トポロジカル性を検出するためのあらゆる方法について調べ、表面敏感ではない測定量を提案する。
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