2016 Fiscal Year Annual Research Report
機能性配位子による金属錯体反応場の制御と高難度脱水素化反応における活用
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
16H01018
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 健一 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80293843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 触媒・化学プロセス / 脱水素化反応 / イリジウム / 機能性配位子 / 水素 / アルコール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者がこれまでに明らかにしてきた機能性配位子と遷移金属の協働が生み出す反応場における有機分子の脱水素化反応を高度に発展させ、以下の目的の達成を目指すものである。すなわち、1)従来よりも脱水素化性能の高い新規イリジウム錯体触媒を合成する、2)エタノール水溶液の脱水素化による酢酸合成触媒系を新たに開発する、3)メタノール水溶液の脱水素化による水素製造触媒系を実用レベルにまで格段に発展させる、4)通常は困難なアミンの脱水素化を実現する新しい触媒系を構築する、という4つが目的である。 本年度はまず、上記1)に関する成果として、8-キノリノラート型の機能性配位子を有する新規イリジウム錯体の合成に成功した。さらに本錯体を触媒として用い、各種アルコールの水溶媒中での脱水素的酸化によって、カルボニル化合物と水素を同時に与える触媒系を構築した。 次に、上記2)に関する成果として、6,6'-ジオナート-2,2'-ビピリジン型の機能性配位子を有するイリジウム錯体触媒を用い、炭酸水素ナトリウムの存在下でエタノール水溶液を加熱還流することによって、非常に高い収率で酢酸を得ることに成功した。本反応における副生成物は水素のみであり、環境調和性に優れた酢酸合成法として興味深いと考えている。 さらに、上記3)に関する成果として、6,6'-ジオナート-2,2'-ビピリジン型の機能性配位子を有するイリジウム錯体触媒を用い、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムから成る緩衝溶液条件下でメタノール水溶液の脱水素化を行うことにより、300時間以上の長時間に渡って持続的かつ一定速度での水素製造が可能な新規触媒系を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の当初の研究実施計画は、1)従来よりも脱水素化性能の高い新規イリジウム錯体触媒を合成する、2)エタノール水溶液の脱水素化による酢酸合成触媒系を新たに開発する、の2点であった。これら2点について、当初の目的を達成することができた。さらに、平成29年度に取り組む予定であった、3)メタノール水溶液の脱水素化による水素製造触媒系を実用レベルにまで格段に発展させる、という計画についても一定の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も当初の研究実施計画にしたがって遂行していくが、特に「通常は困難なアミンの脱水素化を実現する新しい触媒系を構築する」を重点的に検討する。基礎的な反応の調査から着手するのはもちろんのこと、アミンの脱水素化反応を活用する新しい有機ハイドライド水素貯蔵システムの構築にまで発展させることを目指す。 また、「エタノール水溶液の脱水素化による酢酸合成触媒系の開発」、「メタノール水溶液の脱水素化による水素製造触媒系の実用レベルへの発展」についても、平成28年度までに得た成果をもとにして研究を継続する。
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