2016 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子が繰り出す変幻自在な反応場の機能設計
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
16H01024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森内 敏之 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60281119)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチド / 核酸塩基 / 不斉構造規制 / 高次反応場 / 触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体分子が繰り出す変幻自在な自己組織化プログラムを反応場設計に応用し、触媒機能を有する機能性金属錯体の分子レベルでの緻密な配列・空間制御を行うことにより活性部位間の協奏的かつ相乗的効果に基づく機能創発を行うとともに、生体分子の暗号化を利用した機能情報プログラミング反応場システムを開発することを目的とする。本年度は、C末端に触媒活性部位を有するジペプチド共役分子の機能設計と不斉構造規制場の構築について検討を行った。 C末端に有機触媒として機能するピリジンN-オキシド部位を有するアラニルプロリン鎖からなる二鎖型および一鎖型のジペプチジルフェロセン誘導体1および2を設計合成した。単結晶X線結晶構造解析により、二鎖型ジペプチジルフェロセン誘導体1では、両ジペプチド鎖はアラニン部位での逆平行βシートタイプの分子内水素結合により同方向に配向制御され、分子全体が不斉構造規制されるとともに、二重らせん状の構造を形成していることが明らかとなった。この不斉構造規制により、C末端に導入したピリジンN-オキシド触媒活性部位が不斉環境にあり、不斉触媒として機能することが期待される。また、分子内水素結合に基づく不斉構造規制により、フェロセン部位はP型に不斉誘起されていた。一方、一鎖型ジペプチジルフェロセン誘導体2の結晶構造では、分子内水素結合に基づく不斉構造規制場は形成されておらず、独立した二分子が分子間水素結合を形成していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、C末端に有機触媒として機能するピリジンN-オキシド部位を有するアラニルプロリン鎖からなるジペプチジルフェロセン誘導体を設計合成し、不斉構造特性を明らかにした。その結果、ジペプチジルフェロセン誘導体において、分子内水素結合により分子全体が不斉構造規制され、C末端に導入したピリジンN-オキシド触媒活性部位が不斉環境下にあることを明らかにしている。平成29年度に展開を予定しているペプチド共役分子の触媒機能化のための重要な知見が得られており、目的達成にむけ順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に得られた知見をもとに、フェロセン-ペプチド共役分子が作り出す不斉構造規制反応場を利用した不斉アリル化反応などの有機触媒としての有用性について検討を行う。また、C末端に有機触媒として機能するジメチルアミノピリジン部位を有するペプチド共役分子を設計合成し、不斉有機触媒としての有用性について検討を行う。さらに、設計構築したペプチド共役分子からなる高次反応場において、アミノ酸の配列・組合せの違いによる不斉構造規制場の制御、つまり不斉空間場の制御を行い、触媒機能の動的機能化を図る。
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