2016 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の構造変化で動的反応場変換するバイオ触媒の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
16H01029
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
松尾 貴史 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (50432521)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 生体触媒 / 反応場変換 / コバルト錯体 / タンパク質ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の金属・バイオ触媒の開発研究では、反応活性点の構造を最適化し、事前組織化された反応場を構築する方法がとられてきた。しかし、タンパク質は多くの分子自由度が存在する分子であるため、タンパク質を基盤とする生体触媒の開発においては、ホストタンパク質分子の構造柔軟性(動的構造効果)を利用すれば、触媒反応「スイッチング」が期待できる。今年度は、このような構造変換を起こすアデニル酸キナーゼ(ATP/ADP/AMPに対するリン酸基転移酵素)を用いて、このタンパク質表面に新規コバルト錯体をコンジュゲートし、化学修飾タンパク質の同定を実施した。核酸分子の取り込みによって、距離変化が大きいアミノ酸残基Ala55とVal169をシステインに変換した三変異体タンパク質を調製した。また並行して、末端にヨードアセトアミド基を有する新規コバルト錯体の9段階合成ルートを確立した。このコバルト錯体を用いて、アデニル酸キナーゼ変異体の化学修飾を行い、2分子の錯体分子の導入を質量分析によって確認した。化学修飾の効率について、用いる修飾分子の等量数を変化させて評価したところ、タンパク質一分子に対して、2.5等量の錯体分子で化学修飾が完結することが示され、高い化学修飾効率であることが分かった。さらに、この化学修飾タンパク質は、アデニル酸キナーゼ本来の性質を保っていた。また、紫外可視吸収スペクトルによって、タンパク質の構造変換が起きた結果、2つの錯体中心の相互作用が生じることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質表面にコンジュゲートできる新規コバルト錯体の合成ルートを確立でき、この錯体によって化学修飾したアデニル酸キナーゼの同定が行えた。当初の予想通り、アデニル酸キナーゼ本来の性質は保たれいること、ホストタンパク質の構造変換によって錯体同士の相互作用が生じることが確認でき、当初の分子設計の妥当性が示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
調製したコバルト錯体修飾タンパク質を用いて、還元剤存在下での脱ハロゲン化反応の触媒反応経路スイッチング挙動を評価する。
|
Research Products
(5 results)