2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of oxidative material transformation by using activation of molecular oxygen
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
16H01033
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
内田 竜也 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (50380564)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空気酸化 / 不斉酸化 / 炭素ー炭素結合構築 / 鉄触媒 / ルテニウム触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
O2は、大気中に豊富に存在する最も原子効率が高く、環境適応性に優れた酸化剤であり、酸素添加、あるいは水素受容体として作用する。最近、我々は、鉄―サラン錯体が、O2を酸化剤にナフトール類の各種酸化的分子変換反応の有効な触媒となることを見出している。同反応は、系中に生じる鉄―ナフトキシド種をO2が1電子酸化し、対応するナフトキシラジカルアニオン種を与え、進行する。さらに、1-メチル-2-ナフトール類は、同反応条件に曝すと対応する優れた求電子剤であるo-キノンメチド種を与えることを見出した。そこで、鉄触媒添加条件下、各種フェノール類を求核剤とし、1-メチル-2-ナフトール類の酸素酸化の検討を行ったところ、酸化的キノンメチド生成、1,4-付加、酸化的求核的脱芳香環化を経て、対応するスピロ化合物が高エナンチオ選択的に得られた。また、同反応の反応中間体として考えられるビスアレノール類を別途合成し、反応条件に曝すと分子間反応と同様の高立体選択性にて反応が進行し、この時、置換基の電気的、および立体的性質に関わらずナフトールユニットが選択的に酸化され対応するスピロ環化合物を与えた。 同法は、豊富な炭素資源であるフェノール類から直接かつ触媒的に有用な合成中間体であるキノンメチド類を与える有効な手法である。 また、ルテニウム錯体も2ーナフトール類の酸化的カップリング反応に対して良好な触媒作用を示すことを見出した。ルテニウム錯体が触媒する同反応は、室温付近で空気中の酸素を酸化剤に進行し、良好な収率、立体選択性にて対応する2-ナフトール類を与える。さらに、異なる2種類の2-ナフトール類を競合させると比較的良好な選択性にてクロスカップリング体を与えることが明らかになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
効率的酸素活性化には、2つの電子を分子状酸素に与え活性化することが不可欠である。その観点から、今年度得られた酸素酸化を駆動力とする炭素ー炭素結合構築法に関する知見は、酸素活性化の初期段階に相当する1電子移動過程を知るために重要な情報となる。 一方、ルテニウム触媒を用いた2-ナフトールのカップリング反応では、用いる2-ナフトールの電子的性質とその立体的要因が反応速度に関与していることが示唆されてきている。一般に、電子移動過程は、電子豊富な基質からより容易に進行する。しかし、同反応系では、電子豊富な3-メトキシ-2-ナフトールは、カップリング生成物を与えず、また、電子不足で反応の進行が遅いと予想される7-ブロモ-2-ナフトールも同様に酸化性背物の生成が観測されなかった。当初、3位の置換基の立体的要因により反応が妨げられたと考えられた。しかし、興味あることに、3-メトキシ-2-ナフトール、および7-ブロモ-2-ナフトールを1/1の混合比にて競合し、酸化条件に曝すと興味あることに、対応するクロスカップリング生成物が高い選択性にて生成することが示された。同知見は、2-ナフトール類の酸化的カップリング反応では、用いる2ーナフトール類の酸化電位と構造あるいは電気的性質に由来する求核力が深く関わっていることが示唆された。 これらの知見は、3-メトキシ-2-ナフトール、あるいは7-ブロモ-2-ナフトールを用いれば、ルテニウムおよびナフトール錯体からの酸素分子への1電子移動過程を詳細に追跡できる可能性を示している。 これらの知見、および考察から当該年度の研究は、概ね順調に進展したものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度の研究に引き続き、2-ナフトール類の酸化的カップリング反応の反応機構に関する知見の収集を進め、酸素活性化の反応機構の詳細を明らかにするため、まず、次に示す、1)電気化学的装置を用いた2ーナフトール類の酸化還元電位と反応性、立体選択性の相関関係の詳細に関する知見収集、ならびに2)2-ナフトール類とルテニウム錯体の構造相関関係を明確にするためのジョブズプロットの作成と単結晶を図り、同時に、競合条件化におけるルテニウムイオンの酸化電位の変化に関する知見収集を進め、3)これらの知見をもとに反応性と耐久性を兼ね備えた新規ルテニウム錯体の構築を進める。 これらのルテニウムの知見をもとに、環境負荷が低く、地上に豊富に存在する鉄イオンを用いた4)新規錯体のデザインの再検討、5)得られた錯体の酸化電位の詳細を明らかにしつつ、標的の酸素分子を酸化剤兼酸素源とする酸素原子移動反応の実現を図る。
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