2016 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of Bioinspired Catalysts with Specific Fields
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
16H01035
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久枝 良雄 九州大学, 工学研究院, 教授 (70150498)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酸化チタン / ビタミンB12 / 反応場 / 脱ハロゲン化反応 / 還元反応 / 酸化反応 / バイオインスパイアード触媒 / ナノ空間材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
触媒系の設計コンセプトとして、金属酵素の活性部位の構造から重要な金属錯体部位を取り出し、単純化した金属錯体を分子設計し、それと反応場を提供するナノ材料を組み合わせるという手法をとった。生体触媒の妙は活性部位を取り巻くミクロ環境(反応場)にあるので、酵素反応場特性をもつナノ空間材料を選択する。このように、金属錯体とナノ空間材料を組み合わせて、バイオインスパイアード触媒を構築するという戦略をとった。ナノ空間材料を利用する特性としては、反応加速・高選択性・特殊反応場効果が期待でき、環境適合型の画期的な触媒系の構築(機能イノベーション)が期待できる。本研究では酵素反応場を反映したナノ空間材料として、酸化チタンナノ粒子・高分子・金属有機構造体(MOF)を用いることを計画している。これらはタンパク質やアミノ酸を含まないが、疎水性場・不斉反応場・界面特殊反応場などを与えることができるので、反応活性点に特異な効果を提供できる。本年度は、酸化チタンナノ粒子とビタミンB12誘導体を用いた触媒反応について検討し、酵素反応では不可能な反応の開拓に成功した。 TiO2に紫外線照射するとホールと励起電子が生じるが、ホールが犠牲還元剤によりクエンチされると、励起電子がビタミンB12を還元活性化し、超求核性のCo(I)種が生じる。このCo(I)種を触媒として用い、ハロゲン化物との反応によりCo-C結合を持つアルキル錯体が生じ、脱ハロゲン化反応が進行した。 更に、酸化チタンにビタミンB12誘導体を共有結合で連結し、光により活性化するハイブリッド触媒系を構築した。この触媒を用い、有機ハロゲン化物を脱ハロゲン化(還元)し、生成する有機ラジカル種と空中酸素の反応(酸化)により酸クロリドが生成し、アルコールと反応するとエステル体が、アミンと反応するとアミド体が生成する触媒系の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、酵素の精緻な反応場特性のエッセンスを抽出し、それを反映したナノ空間材料とモデル錯体の組み合わせによりバイオインスパイアード触媒を構築する。すなわち酵素反応場を意識した触媒系を構築し、天然酵素を凌駕する革新的触媒の開発を目指している。本年度は、酸化チタンナノ粒子とビタミンB12誘導体を用いた触媒反応について検討し、酵素反応では不可能な反応の開拓に成功した。すなわち、酸化チタンにビタミンB12誘導体を共有結合で連結し、光により活性化するハイブリッド触媒系を構築した。この触媒を用い、有機ハロゲン化物を脱ハロゲン化(還元)し、生成する有機ラジカル種と空中酸素の反応(酸化)により酸クロリドが生成し、アルコールと反応するとエステル体が、アミンと反応するとアミド体が生成する触媒系の構築に成功した。本触媒系を用いることにより、トリクロロメチル基からエステル類やアミド類への一段階変換が可能となった。これは、触媒-反応場-反応条件を工夫した結果であり、研究目標に向かって、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ビタミンB12酵素反応からインスパーアーされる反応に取り組む予定である。酵素反応のエッセンスを生かし、メチル基転移反応からインスパーアーされるトリフルオロメチル化反応、パーフルオロアルキル化反応に取り組む。反応場としては、光増感剤を用いる系と電気化学的活性化の両方の反応系を計画している。すでにトリフルオロメチル化反応およびパーフルオロアルキル化反応を電気化学的に進行させる反応系を見出しているので、反応機構を解明し、効率の高い触媒システムを構築する。 また、天然色素であるポルフィリンの異性体であるポルフィセンに注目し、そのコバルト錯体の特異な反応を検討する。活性部位はコバルトであるが、その配位子の還元体が反応をサポートする新規な反応を明らかにする。
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Research Products
(12 results)