2016 Fiscal Year Annual Research Report
Organic synthesis and process engineering with soft-gel reaction field
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
16H01036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三浦 佳子 九州大学, 工学研究院, 教授 (00335069)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 固定化触媒 / フローリアクター / ゲル / ナノゲル / モノリス |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリN-イソプロピルアクリルアミドをベースとした高分子ナノゲル粒子、多孔高分子ゲル、を合成した。これらの高分子に対してPd(II), Pd(0)を固定化した、固定化触媒を開発し、クロスカップリングについて検討した。特に2つのゲルのやわらかさについての物性に着目して研究を進めた。Pdは、ジメチルアミノ基を導入して、イオン間相互作用を利用して固定化し、還元によってPd固定化触媒を得た。 まず、高分子ナノゲルを用いた固定化触媒を検討した。高分子ナノゲルを100-500nm程度の大きさに調製した。この時、高分子ナノゲルの架橋密度を5-30%まで変化させた。架橋密度が多いほどゲルは硬くなり、ゲルの内部空間は狭くなる。高分子ナノゲルを用いた触媒では、高分子の網目架橋密度に応じて、固定化Pd触媒の活性が変化した。網目架橋度を増大させた場合にのみ、Pdの反応中でのオストワルド成長、失活を防いで高い触媒活性を示すことがわかった。この高活性に基づいて、鈴木カップリング反応は30℃、水溶液条件下という温和な条件で効率的な反応を示した。高分子ナノゲル固定化担体の架橋密度が高いほど触媒活性が高くなることがわかった。 また、高分子の多孔ゲルを調製して、多孔ゲルの内部空間を用いたフローリアクターの設計を行った。ポリN-イソプロピルアクリルアミドゲルは温度応答性があるため、高温で重合すると収縮して多孔ゲルを生じる。多孔ゲル内部にPdを固定化させて、更に孔を利用して基質を流通させることで、反応を検討した。多孔ゲルを固定化担体として用いた場合には、高い反応効率を示し、シリカゲルなどに比べて流通固定化担体として優れていることがわかった。この高い反応活性はPd触媒の安定性と基質の輸送拡散が円滑に行われていることに依存することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲルを固定化担体とする新しい有機合成を提案している。触媒自体よりも固定化担体のやわらかさ、物質の透過性、フロー反応などの化学工学に着目することで有機反応を大きく制御できることを新しく見出してきている。また、領域研究であることから他の研究者との融合による新たな有機プロセスの確立が必須であるが、複数の研究者とのコラボレーションが順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、ゲルのやわらかさを生かして、フロー反応を中心にした研究を進めていく。研究は1)新しいリガンドを導入した固定化触媒、フロー反応、と2)酵素触媒を固定化したフロー反応、3)分子触媒を固定化したゲルモノリスの調製とフロー反応 について検討を進めていく。 これまでのゲルの固定化触媒では主にヒドロゲルを扱っており、水溶媒での反応のみを扱っていた。そのため反応が限られていた。そこで、ポリスチレン型のオルガノゲルリアクターを検討し、同時にトリフェニルホスフィンを側鎖に含むリガンドを導入した触媒について扱う。一般的な有機反応に用いることのできるフロー反応の確立を行う。 また、酵素などの生体触媒を多孔ゲルに固定化したフロー反応の構築を行う。スクシイミド基を有する多孔ゲルを利用して、酵素を固定化するゲル、及びそれを用いた化学反応リアクターの創製を行う。これは領域内での酵素触媒の研究者との共同研究の予定である。 新しい試みとして、分子触媒を固定化したゲルモノリスによるフローリアクター設計を計画している。高分子ではモノマーを設計することで、種々の官能基を高密度に配置することができる。有機分子触媒からなるフロー触媒空間による有機反応について検討を行う。
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