2016 Fiscal Year Annual Research Report
インターバンドラシュバを用いたスピン軌道ブロケードの最適化
Publicly Offered Research
Project Area | Science of hybrid quantum systems |
Project/Area Number |
16H01045
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古賀 貴亮 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30374614)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スピンエレクトロニクス / ナノ材料 / メゾスコピック系 / 半導体物性 / 量子井戸 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、当初の研究計画に沿って、以下のことを行った。 (1)(001)InP基板上のエピ成長されたInGaAs二重量子井戸のエピ面をエピレディ(001)Siウェハ表面に接合した。この実験は、シクロテンという樹脂を用い、北海道大学大学で仮接合を行った試料を、東北大学理学部所有のウェハー接合装置を用いてシンター(焼結)するという手順で進めた。 (2)このウェハ接合体のSiウェハ側を結晶研磨器の試料貼り付け板にエレクトロワックスで固定し、元々630umの厚さがあった(001)InP基板をおおよそ3umの厚さになるまで結晶研磨した。(1)-(2)の実験1サイクルには1~2ヶ月の時間がかかるが、3度目のトライでようやく成功した。この試料に関しては、平成29年度に実験を引き継ぎ、デバイス作製を試みる。 (3)今後の研究に必要な希釈冷凍機の修理を専門業者に依頼して行った。修理は2017年2月に完了し、2月末に専門業者と本研究代表者で、代表者の研究室にて動作確認を行った。 (4)弱局在-弱反局在効果を実空間シミュレーションで数値的に計算する手法を学生と共に開発し、論文発表を行った。 (5)InGaAs二重量子井戸をスピン選択散乱体と考えてエデルシュタイン効果(電流誘起のバルクスピン偏極効果)をエンハンスする手法を考察した。この件に関しては、海外共同研究加速化基金の援助を受けてブラジルサンパウロ大の教授を招聘すると共に米国パデュー大学を訪問し、議論を重ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウェハ接合は本研究での新たな試みであったが、事前の情報収集を念入りに行うことにより、試行錯誤の回数を少なく抑えて、結晶研磨に耐えうる接合強度を得ることができた。結晶研磨も過去に数回の試行実験を行ったことはあるが、実質的に今回新たに試みた実験であると言える。均一性や平坦性が、当初の目論見通りの精度で得られないことも考えられたが、目標とするレベルに達するものが得られた。希釈冷凍機の修理も、専門業者への発注であったが、必ずなおるという保証はなく、否定的な想定もしていたが、2017年2月末に専門業者と共に行った動作確認で、規定通りの冷却能力が回復したことを確認し、平成29年度の実験に使用することができる状態となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、限られた予算、人員、時間の中で計画されたものである。研究の推進方策の選択肢は、実際に遂行可能なものの何倍もの数がある。そのような中、平成28年度は、論文発表という最後の目的には直結しないが、今後長きにわたる研究の基礎技術として有益と思われる技術の開発に力をいれた。この技術が、論文発表という最終目的に到達するには、長期的な努力の継続が必要であり、平成29年度末で終了となる本研究計画内ですべてを完成させようとすることには無理がある。そこで、この内容は、本研究とは別の将来研究課題にも引き継がせ、長期的な計画で実施すること考えている。一方、平成29年度は、既存のInGaAs単一量子井戸をデバイス加工するという、技術的にはこれまでに確立した方法により試料を作製し、希釈冷凍機を用いて極低温の環境で電子輸送特性の測定を行うことにより、できるだけ論文発表に近い研究を実施する予定てある。
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