2016 Fiscal Year Annual Research Report
光子・電子・核子スピン量子もつれエンジニアリング
Publicly Offered Research
Project Area | Science of hybrid quantum systems |
Project/Area Number |
16H01052
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小坂 英男 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20361199)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子もつれ / 光子 / 電子 / 核子 / 幾何学量子 / 量子操作 / 縮退スピン / キュービット |
Outline of Annual Research Achievements |
ハイブリッド量子系の中でも特に、光子、電荷、電子スピン、核スピンの4つの物理量を量子力学的に結合する量子もつれ物理の探求を行い、長時間量子メモリー、高感度磁気センサー、単一スピン計測、高感度物性測定などに結びつけることを目指した。ダイヤモンドに内在する量子もつれの力を自発的に引き出すことでこれを可能とした。 具体的には、H28年度に下記を行った。 ・光波による電子スピン縮退論理キュービットの幾何学的量子操作 電子スピン縮退論理キュービットを光学励起状態の|A2>準位を補助準位として光波により幾何学操作を行った。まずは、|A2>準位に共鳴する光波を約100ns照射することで、その偏光に直交した量子状態に初期化した。次に、任意の偏光をもつ自然放出寿命(約10ns)以下の光波の2πパルスを照射することで幾何学的量子操作を行った。この際、光波の偏光で回転軸を設定し、前半と後半のπパルスの位相差で回転角を決める任意軸かつ任意角の単一量子回転を可能とした。さらに、光波の任意の偏光で射影読み出しを行うことも可能とした。 ・マイクロ波による電子スピン縮退論理キュービットの幾何学的量子操作 光波と同様の操作をマイクロ波の偏光自由度を利用して行った。この場合には、スピン基底状態の|0>準位を補助準位として利用した。|0>準位への初期化は532nmのグリーンレーザで行った。次に任意の偏光をもつマイクロ波のπパルスを照射することで、電子スピンの縮退論理キュービットを任意の量子状態に初期化した。次に、任意の偏光をもつマイクロ波の2πパルスを照射することで幾何学的量子操作を行った。この際、マイクロ波の偏光で回転軸を設定し、前半と後半のπパルスの位相差で回転角を決める任意軸かつ任意角の単一量子回転を可能とした。さらに、マイクロ波の任意の偏光で射影読み出しを行うことも光波と同様に可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案書に示したH28年度の計画通り、光波およびマイクロ波による電子スピン縮退論理キュービットの幾何学的量子操作に成功した。ダイヤモンド中の電子および核子のスピン縮退した二準位を論理量子として用いることで物質に内在する量子もつれの力を自発的に引き出すとともに、デジタルコヒーレンス技術を駆使したアダプティブな量子もつれ制御でこれが可能となった。これにより、工学、理学から医学に至る幅広い分野にインパクトをもたらすとともに、量子情報物理に啓発された新しい学術領域を確立する大きな足掛かりとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
提案書に示した計画通り、H29年度は下記の2点を遂行する。 ・電子スピンと核スピンの縮退論理キュービット間の任意量子もつれ状態生成と完全ベル状態測定 電子・核子間の超微細相互作用という物質に内在する量子もつれの力を利用し、マイクロ波およびラジオ波の偏光自由度を制御することにより、縮退論理キュービットの任意量子もつれ状態を生成する(図5)。まずは、電子、核子共に0状態に初期化する。次に、ラジオ波により核子を偏光に対応した量子重ね合わせ状態にする。その後、核スピンを制御量子、電子スピンをターゲット量子とした二重C-NOT操作によりに量子もつれ状態を形成する。 ・量子テレポーテーション原理による光子から電子スピンを介した核スピンへの伝令付き量子メディア変換 電子のスピン軌道相互作用という物質に内在する量子もつれの力を利用した、量子テレポーテーションの原理にヒントをえた量子転写を行う。まずは、上記の手法で電子と核子の量子もつれ状態を形成する。その後、電子をA2あるいはA1準位(軌道・スピンもつれ状態)に励起する光子を吸収した際、光子の量子状態は核子へと転写される。転写の成功検知には、電子の軌道(Ex励起)のみを用いた量子非破壊シングルショット測定を行うことで、伝令付きの量子メディア変換が可能となる。本転写の核となる技術は光子吸収による光子と電子の量子もつれ測定であり、提案者が世界に先駆けて成功したものである。
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