2016 Fiscal Year Annual Research Report
Antisymmetric spin-orbit coupling effect in Kondo semiconductors with zigzag chains
Publicly Offered Research
Project Area | J-Physics: Physics of conductive multipole systems |
Project/Area Number |
16H01076
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高畠 敏郎 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (40171540)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 近藤半導体 / セリウム化合物 / ジグザグ鎖 / 反対称スピン軌道相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
直方晶の近藤半導体CeT2Al10 (T = Ru, Os)では,Ce原子サイトは局所対称性を持たず,c軸方向にジグザグ鎖構造をなしている。これらはCe化合物としては例外的に高いTN=28Kで反強磁性秩序し,その際Ce磁気モーメントは磁気困難軸であるc軸方向に向く。この特異な反強磁性秩序の原因を探るために,本研究では,その混成ギャップ形成と特異な反強磁性秩序における反対称スピン・軌道交互作用の効果を検証することを目的とし,計画した研究を行い下記の成果を得た。 高畠は連携研究者の梅尾及び大学院生とともにCeT2Al10 (T = Ru, Os)のNernst効果の測定準備を進めると同時に,一軸圧下で磁化と比熱を測定した。b軸方向に加圧した場合,磁化率が最大となる温度は変化しないにも拘わらず,TNが上昇することを確かめた。このことは,TNがc-f混成強度ではなくb軸長に強く依存する事を示している。連携研究者の木村はCeOs2Al10の5d電子・正孔ドープ系の偏光反射分光によって,E//bの電荷励起ギャップがTNと相関している事を明確にした。 浴野(連携研究者)は大学院生とともに4f正孔,5d電子・正孔をドープしたCeOs2Al10の破断接合トンネル分光実験を実施し,ギャップ内状態が発達するに連れて,混成ギャップと反強磁性ギャップが潰れることを観測した。特に,混成ギャップが残っている状態でのみ磁気秩序が保たれる事を見出した。 研究協力者D.T. Adroja は中性子散乱によってCeRu2Al10のAlサイトをSiで置換すると,RuをRhで置換した場合と同様に,磁気モーメントは伸びるがTNは低下することを見出した。従ってAlの3p電子もRuの4d電子と同程度に4f電子と混成して磁気秩序に関与していると推測した。連携研究者の横谷は軟X線角度分解光電子分光実験でフェルミ面の一部を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近藤半導体のCeT2Al10 (T = Ru, Os)が, 28Kという高温でAFM秩序する機構に,反対称スピン軌道相互作用が関与しているかを調べるために,計画した研究を実施した。b軸方向の一軸圧下でTNが上昇することは,E//bの電荷ギャップが重要であるという光反射の結果と対応している。28年度の成果はPhys. Rev. Lett. 1編を含む計8編の英文論文として公表するとともに国際会議で6件の発表を行ったので,おおむね順調に進展している。 一方,Nernst効果の測定にはナノボルトの微小電圧を増幅する前置増幅器が必要である。これが入手できていないので,実績のある中国北京科学院の研究者との共同研究を進めようとしている。STSとSTMによるギャップの異方性の測定では,平坦な壁界面が必要であるので,超高真空中での壁界を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
CeT2Al10 (T = Ru, Os)の反強磁性秩序構造は,モーメントが磁化の困難軸のc軸に向いた構造であることが中性子回折実験から結論されていた。しかし,最近実施した軟X線偏光共鳴散乱によって,CeRu2Al10の磁気モーメントはc軸方向からa軸方向に約10度傾いていることが判明した。これは,反対称スピン軌道相互作用がはたらいていることを示唆する。この相互作用はCmcmの空間群では現れないはずであるので,単結晶構造解析によって,空間群を再検討する必要が出てきた。これまで,破断接合トンネル分光では,単結晶を用いても,ギャップの異方性が観測されていなかった。今後,原子レベルの空間依存性を測定できるSTM/STSを用いてフェルミ準位付近の状態密度の異方性と温度変化を調べる計画である。角度分解光電子分光実験で,フェルミ面が観測され始めたので,ギャップの異方性が直接観測されるはずである。これらの結果を,進行中のバンド計算の結果と合わせて,異方性を理解したい。
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[Presentation] パルスマグネットを用いた近藤半導体CeT2Al10 (T=Ru, Os, Fe)の圧力下磁気抵抗2017
Author(s)
近藤晃弘, 金道浩一, 山本昇由, 片岡真一, 谷田博司, 世良正文, 川端丈, 高畠敏郎, 西岡孝
Organizer
日本物理学会第72回大会
Place of Presentation
大阪大学豊中キャンパス(豊中市)
Year and Date
2017-03-19
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