2016 Fiscal Year Annual Research Report
周期系・準周期系重い電子系に普遍的な新しい量子臨界物性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | J-Physics: Physics of conductive multipole systems |
Project/Area Number |
16H01077
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40334346)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子臨界現象 / 準結晶 / 近似結晶 / 非フェルミ液体 / 強相関電子系 / T/Bスケーリング / 重い電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
準結晶Yb15Al34Au51の電子状態を理解する第一歩として、1/1近似結晶Yb14Al35Au51の電子状態の解析を行った。準結晶と共通の基本格子構造を構成する、同心円状のYb-Al-Auクラスター(Tsai型クラスター)を体心立方格子の格子点に配置させ、Ybの4f軌道とAlの3p軌道についてのタイトバインディング近似に基づく拡張周期アンダーソン模型を構築し、重い準粒子のバンド構造を明らかにした。これまで、Ybが2価と3価の間の中間価数をもつYb系近似結晶では、単位胞あたりに多数の原子が存在するため、第一原理バンド計算の実行が妨げられてきたが、本研究により、重い電子状態がはじめて明らかにされた。圧力下の近似結晶において、最短のYb-Al間距離をもつ第3殻のYb原子と第4殻のAl原子の間の4f-3p電子の電荷移動ゆらぎが著しく増大し、運動量空間のΓ点近傍でほとんど分散をもたないlocalなモードが出現することを見出した。このモードに、最近開発された磁場下の臨界価数ゆらぎのモード・モード結合理論を適用して解析を行った結果、f電子間の強い局所相関の効果により、非常に小さな臨界価数ゆらぎの特徴的温度T0が出現し、磁化率が零磁場極限で温度の-0.5乗のべき的振る舞いを示し、有限磁場下で、温度Tと磁場Bの比で一つのスケーリング関数で表される、T/Bスケーリングの振る舞いを示すことがわかった。この新しい量子臨界現象はまさに準結晶で観測されている。 準結晶は近似結晶の単位胞の大きさを無限大にした極限に対応するので、臨界価数ゆらぎの特徴的温度T0は、近似結晶よりさらに小さくなり、測定最低温度より小さくなることを議論した。そのため、圧力下の近似結晶、および準結晶において、本研究で明らかにした機構が実現していると考えられる。実際、最近圧力下(1.9 GPa)の近似結晶でもそれが観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、1/1近似結晶Yb14Al35Au51のYbの4f軌道とAlの3p軌道からなる拡張周期アンダーソン模型を構築し、重い準粒子のバンド構造を明らかにすることができた。その模型から出発して磁化率の量子臨界現象およびT/Bスケーリングの振る舞いが出現することを明らかにできており、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの理論研究をさらに推進するとともに、準結晶、巨大ユニットセルをもつ近似結晶、および周期結晶の実験研究者と議論を重ね、密接に連携しながら新しい量子現象の発現機構とその普遍性の解明に取り組む。国内および国際会議に参加してこれまでの成果発表を行うとともに、上記の議論および研究打ち合わせを行う予定である。
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