2016 Fiscal Year Annual Research Report
Probing dark matter structure based on dynamics of old stellar population in galaxies
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
16H01086
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 柾司 東北大学, 理学研究科, 教授 (50217246)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
加速膨張する宇宙の中で物質密度を支配しているのは暗黒物質であり、宇宙の構造形成や銀河形成に本質的な役割を演じている。つまり、暗黒物質の本質を解明することは現代物理学の最大の課題である。現在の標準理論では、冷たい暗黒物質とよばれる理論によって自然に説明できることが知られているが、銀河系や衛星銀河の空間スケールをみると、冷たい暗黒物質の理論予言と矛盾する観測事実が報告されており混沌とした状況にある。 この問題のひとつに、ミッシングサテライト問題とよばれるものがあり、理論で予言される銀河系衛星銀河の数とこれまで実際に観測されている衛星銀河の数に大きな食い違いが存在している。この問題の鍵として、これまでは全体の衛星銀河のごく一部しか観測されておらず、実際は理論予言にあるようにもっと存在しているという考え方がある。 我々はこの問題に重要な知見を得るために、現在進んでいるすばる望遠鏡の超広視野カメラを用いた観測データから、系統的に衛星銀河探査を進めている。そして、これまで新しい衛星銀河を2個発見し、既に学術論文1本を発表しており、もう1つ論文も投稿準備中である。さらに、この発見に基づいてプレスリリースを行い、世界中のメディアによって取り上げられた。このように、本研究により当該分野において重要な成果を達成することができた。 さらに、将来の多天体分光観測に向けて、既知の銀河系衛星銀河をすばる望遠鏡の超広視野カメラによって系統的にサーベイするプログラムを進め、撮像そのものはほぼ完了できた。今後は、分光観測の計画を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すばる超広視野カメラのデータを用いた銀河系衛星銀河探査では、予想通りのペースで新しい衛星銀河を発見できており、今後も大いに期待できる。また、既知の銀河系衛星銀河の系統的な撮像とその解析も進み、また分光観測の計画も少しずつ進捗しており、概して順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に基づき、引き続き以下の研究を推進する。 (1)銀河系・アンドロメダ銀河における未発見矮小銀河の探査:すばる望遠鏡に装着されている超広視野カメラを用いたサーベイデータに基づき、銀河系の矮小銀河を探査する。特に、銀河系ハローの遠方にあってかつ暗い矮小銀河を探査する。 (2)矮小銀河における大域的な星形成史の決定と暗黒物質構造との関連:銀河系にある矮小銀河は、暗黒物質の研究において重要であるとともに、銀河系のような明るい銀河の階層的形成にも密接に関係しており、個々の矮小銀河の星形成史と化学動力学構造の進化を知ることが大変重要である。ところが、これまでの撮像観測では、概して各銀河の内側 部分の観測に制限されており、もっと大きくて広がった空間領域の各矮小銀河の大域的な撮像観測を遂行する必要がある。これまでの研究によってこの撮像観測をほぼ達成できたので、今後は恒星系の空間分布や恒星種族の詳細について解析する。
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