2016 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙マイクロ波背景放射における揺らぎの非線形進化
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
16H01098
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
平松 尚志 立教大学, 理学部, ポストドクトラルフェロー (50456175)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙論 / 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ボルツマンソルバー cmb2nd の開発を進め、テンソル型揺らぎ(重力波と結合する揺らぎ)に対する curve-of-sight 公式の実装が完了し、テンソル形揺らぎを含めたバイスペクトル(三点相関関数)の計算が可能になりました。また、バイスペクトルから非ガウス性の度合いを示すパラメータ fNL の見積もりを行い、揺らぎの非線形成長に起因する非ガウス性の観測に対する、テンソル型揺らぎの影響を定量的評価することに成功しました(論文執筆中)。 また、cmb2nd のその他の応用例として、ある種の有質量重力子モデル(massive gravity 理論)において始原的なバイスペクトルを計算し、ここから現在観測されている fNL のスケール依存性に対する説明を試みました。本件の論文(arXiv:1701.05554)は Journal of Cosmology and Astroparticle Physics に投稿し、現在査読を受けています。さらに、もう一つの応用として、将来的に観測が期待されているテンソル型揺らぎの作る B-mode と呼ばれる揺らぎに着目し、その観測から得られるであろう初期揺らぎのパワースペクトルに対してフィッシャー解析を行いました。これによって、数多く存在するインフレーションモデルに対して、B-mode 揺らぎという新しい角度から制限を加えることが可能になり、今後の新しいインフレーションモデルの構築やそれらの峻別に大きく貢献することになります(論文執筆中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初は、研究初年度である28年度にコード開発を集中させ、29年度にその応用的研究を行う予定でした。しかし、開発途上段階における現状のコードでもある程度の応用が可能であることが分かり、先行して一部の応用的研究を本年度中に行いました。 このように、当初より研究を行う順序が一部入れ替わったものの、全体としてはおおむね順調に進展しているものと考えています。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記述した通り、ボルツマンソルバー cmb2nd の開発の継続とその応用的研究を続けていきます。現状、研究の進め方については申請当初からの大きな変更はありませんが、「現在までの進捗状況」で述べたように、28年度中に応用研究の一部を行った関係で研究の順序を一部変更しています。ベクトル型揺らぎの方程式系の実装と、摂動の二次のレベルにおける流体方程式と重力場方程式の実装は、当初28年度に行う予定でしたが、29年度に先送りすることにしました。なお、後者の「流体方程式と重力場方程式の実装」に関しては、「curve-of-sight 公式に対する大規模構造からの影響」という研究課題を新たに設定し、29年度末の完遂を目指しています。また、この他にも、当該研究分野内の研究者との議論の結果として、cmb2nd を利用した応用的研究がこの新学術領域研究の推進に大きく貢献すると判断された場合は、それを新たな研究課題として設定し、優先的に推進する可能性があります。
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