2016 Fiscal Year Annual Research Report
天文コムを利用した視線速度精密測定のためのデータ取得・解析法の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
16H01106
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
神戸 栄治 国立天文台, 岡山天体物理観測所, 特任准教授 (80435510)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光赤外線天文学 / 視線速度精密測定 / 高分散分光器 |
Outline of Annual Research Achievements |
天文コム本体の岡山天体物理観測所への搬入、および、高分散分光器HIDESの較正光源部の改修はほぼ予定通りの2016年7月に完了し、データの取得が可能となった。しかし、導入直後に得られた天文コムのスペクトルには、コムがみえる波長範囲が狭い、等間隔でない余分な線がみられる、調整がうまくできていないためかコムの光量が十分でない、などの問題があった。その後の調整の結果、10月には80nmにわたって等間隔のコムがみられることがあったものの、より安定したコム光を得るためには、ファブリペロー共振器の鏡の交換などを行う必要があることがわかった。 一方、コム本体以外の課題を洗い出すために、2016年12月と2017年2月に視線速度標準星の試験観測を行った。これらの観測では、従来のTh-Arを利用してデータ解析を行った。その結果、1分程度の短時間の間にも光ファイバー内を伝わる光の干渉パターンが変化していて、現状では30m/s程度の視線速度測定精度しか出ていないことがわかった。これについては、今後ファイバー・アジテータを製作し、視線速度測定精度がどの程度改善されるか評価していく予定である。 また、視線速度精密測定に関係した分野で長年共同研究をしている、中国国家天文台興隆観測所やミュンヘン大学でも天文コムが立ち上がりつつあることから、解析ソフトウェアの開発協力や情報交換を進めるために、12月にミュンヘン大学で開催されたワークショップに参加した。現在、これらのコムも参考にしながら、視線速度測定を制限している要素を調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
天文コム本体の調整・改良に時間がかかっているために、まだ実験や試験観測が十分にできていない状況であるが、Th-Arを参照光源として利用するなどして、コム本体以外の課題を洗い出す作業を進めている。2017年4月にファブリペロー共振器の鏡の交換を予定しており、この改良によって質のいいコムのスペクトルが得られれば、コム光を利用した解析に移る予定である。ただし、コム本体の問題を本質的に解決するためには大幅な改修(2号機の製作)が必要であることがわかっており、その開発には1年近くの時間がかかるので、本課題の研究はあくまで1号機を可能な限り改修したものを利用して進めることにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
天文コム本体の問題については、2017年4月にファブリペロー共振器の鏡の交換などの改良を試み、その効果を確かめる。 次に、天文コム本体以外の課題の洗い出しのためには、まず、ファイバー・アジテータを7月頃までに製作し、光ファイバー内を伝わる光の干渉パターンの短時間的な変化が視線速度測定に与える影響を精査する。その後、より高精度な視線速度測定で問題となる要素の調査を行う予定である。 また、視線速度測定の精度の追及をより多角的に進めるために、他機関との交流を進め、複数のコムを比較していくことを予定している。 最後に、これらの研究から、1m/sの精度を出すためのデータ取得や解析の方法を確立していく予定である。
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Research Products
(2 results)