2016 Fiscal Year Annual Research Report
偽偏光を作らない光学系「超伝導ミラー」の開発研究
Publicly Offered Research
Project Area | Why does the Universe accelerate? - Exhaustive study and challenge for the future - |
Project/Area Number |
16H01110
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田島 治 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80391704)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙背景放射 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
CMB偏光観測実験において、観測装置の不完全性が作り出す「偽偏光」を抑制することは最重要課題のひとつである。偏光クロストークを抑制する光学系の導入や、様々な偏光変調技術の開発が進められているが、偽偏光の抑制性能は0.1%程度に留まっているのが現状である。究極のCMB偏光Bモード観測が目指す偏光観測精度はO(10nK)である。たった10μK程度の無偏光揺らぎでさえ深刻な偽偏光となる。偽偏光をさらに2桁抑制する光学系が熱望されている。 意外かもしれないが、望遠鏡を構成する金属ミラーは原理的に偽の直線偏光を作る。理由は単純で、反射率が完全に100%でないからである(抵抗率がゼロでないからである)。ミラー表面を構成する物質の抵抗率を限りなくゼロに近づければ、偽偏光はゼロに近づく。本研究はこれを実践するアイデア「超伝導ミラー」を提案し、原理検証と特性評価をおこなう。 超伝導体の電気抵抗は、超伝導転移時は桁違いに小さくなる。ただし、クーパー対乖離エネルギーより大きなエネルギー(これは周波数に比例する)をもつ電波に対しては、入射表面にて超伝導状態(クーパー対)を壊すため常伝導と変わらない抵抗値を有する。一方、乖離エネルギーより十分小さな観測周波数では電気抵抗は極めて低くなる。つまり、生成される偏光の強度は観測周波数で大きく変わる為、観測周波数帯に相当する乖離エネルギーよりも十分大きな転移温度をもった材質を使う必要がある。ニオブ(Nb)の他にNbNやNbTiなどがその候補となる。本年度は、理化学研究所にある共用の超伝導プロセス装置を使って、シリコン基盤上にNbNを蒸着し、小型の超伝導ミラーを製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超伝導ミラーの試作を達成したものの、その性能評価を完了することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
超伝導ミラーの評価を行う装置の開発と評価。さらに大型化の実現を目指して、加工技術の調査を行なっていく。
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