2016 Fiscal Year Annual Research Report
核マントル境界直下の安定成層の形成および破壊に関する流体力学的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Interaction and Coevolution of the Core and Mantle: Toward Integrated Deep Earth Science |
Project/Area Number |
16H01117
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹広 真一 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (30274426)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱組成対流 / 貫入対流 / 熱伝導率 / 熱組成フラックス / 運動エネルギー生成 / 地磁気永年変動 / 惑星磁場ダイナモ / 内核年齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は理論的および数値的に核マントル境界付近の安定成層の形成および破壊の問題に取り組むものである. 地球外核の外側境界付近において安定成層の存在が古くから議論されてきており, 最近の地震波観測の解析から安定成層を検出する試みが行なわれてきている. しかしながら, 熱および組成の安定効果が対流運動に打ち勝って安定成層が形成されるのか, あるいは逆に破壊されてしまうのか, という根本的問題は未だ完全には解決されていない. 今年度は, 地球外核上層の安定成層の形成あるいは破壊について, 1 次元熱および組成進化モデルの枠組みで理論的な考察を行った. その結果, 外核内の熱組成対流が発生可能な領域を定量的に判断するひとつの基準として, 浮力による仕事率(運動エネルギー生成率)を提案した. 仕事率が正である領域は浮力により運動エネルギーが生成できるので対流が発生可能であると判断できる. 逆に仕事率が負の領域では運動エネルギーが生成できないため,安定成層が形成される可能性があると判断できる. 新しい熱伝導率を用いた地球外核の 1 次元熱および組成収支モデルを構築し, 仕事率の動径分布をさまざまな核マントル境界での熱流量に対して計算したところ, 熱流量が約 9.3 TW より大きい場合には安定成層が形成されず全層対流が発生する結果となった. 一方熱流量が約 4.8 TW より小さい場合には, 核マントル境界直下に数 100km 程度の安定成層ができる可能性があることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初は 2 次元あるいは 3 次元の熱組成対流の数値実験のためのプログラムを作成し, 数値実験を行う予定であったが, 予定を変更して 1 次元熱組成進化モデルを構築し, 理論的考察を行った. その成果として, 安定成層領域と対流領域の判定を理論的に判断する基準を見出すことができた. この理論が 2 次元あるいは 3 次元対流計算により裏付けられれば実際の地球パラメターにおいて安定成層の存在をこれまでより定量的に議論ができるようになると期待され, 地球中心核の構造の推定に役立つだろう. その意味で, 今年度の成果により本研究の目標である安定成層の形成と破壊の予測の実現に大きく近づけたと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 今年度の理論的予測を裏付けるための 2 次元あるいは 3 次元熱対流数値実験を行い, 対流がどの程度安定成層に貫入し, 破壊するのかを調べる. 研究代表者が既に構築している回転系非 MHD の熱対流モデルに軽成分と断熱圧縮効果を新たに導入し, モデルを構築する. 数値実験の設定のひとつは, 上端からは断熱温度勾配に沿った熱伝導による熱流よりも少ない熱流を境界条件として与え、上層に熱的安定成層が生成される状況を与える. 下端境界から軽成分を注入し組成対流を発生させて,熱的安定成層が維持あるいは破壊される様子を観察する. 上端境界での熱流と下端境界での軽成分フラックスの値を様々に変えて, 安定成層が維持される条件と形成される安定成層の厚さのパラメター依存性を見出す. 他の数値実験の設定は, 上端から軽成分を注入し, 上層に組成的安定成層が生成される状況を与える. 上端から冷却することにより熱対流を発生させ、組成的安定成層が維持あるいは破壊される様子を観察する. 上端境界での軽成分フラックスと冷却の強さを様々に変えて安定成層が維持される条件と形成される安定成層の厚さのパラメター依存性を見出す. 数値実験の結果を, 平成28年度にて構築した安定成層の厚さの理論的見積もりと比較し, 理論の正当性と適用可能範囲を調べる.
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Research Products
(4 results)