2016 Fiscal Year Annual Research Report
二次イオン質量分析法とイオン注入法の融合による元素定量分析法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Interaction and Coevolution of the Core and Mantle: Toward Integrated Deep Earth Science |
Project/Area Number |
16H01118
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 正一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60397023)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素 / 炭素 / 拡散 / 二次イオン質量分析計 / イオン注入 |
Outline of Annual Research Achievements |
マントルの状態や対流に大きな影響を与える「水」を含む揮発性物質の循環を明らかにすることは固体地球のダイナミクスと進化の理解に不可欠である.しかし、揮発性であるが故に分析困難であった固体試料中の定量分析は,未踏の分析領域であった.本公募研究では,高温高圧実験生成物や天然マントル試料のあらゆる鉱物及びガラスに対応したイオン注入法による標準試料作成と二次イオン質量分析計による水素定量分析及び同位体分析法を融合し、構造物性班、同位体班、元素分配班の実験試料、天然試料の微量水素定量分析を行い、軽元素地球深部物質循環の解明に新展開をもたらす事を目指している. 平成29年度は,水素拡散炉を改良し,拡散源に水蒸気及びAr/D2を用いた拡散加熱炉に導入した.その性能評価をおこない,水素や水酸基の分子の分圧が変化することで、拡散様式が変化すると評価された.これら分圧を制御するための条件を明らかするため、炉内のガス導入経路の改良、分圧をモニターするための制御露点計、炉内旧着水を低減するための配管継手の材質変更など開発要素を評価した. また,京都大学設置のCameca ims-4f-E7 SIMSによる軽元素同位体分析体制を構築する事に成功し,高圧合成試料の局所水素・重水素同位体分析(佐野他),ダイヤモンドの局所炭素同位体分析(Satish他)の共同研究を行った. また,惑星や衛星の水素同位体組成を決定しているアパタイト結晶の水素拡散実験を行い,アパタイト結晶の水素拡散挙動を明らかにすることを目的とし,C軸に沿う水素拡散係数を決定し,Geochemical journalに論文が掲載された(Higashi et al., 2017. GJ, 51, 115-122.).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していたとおり,京大設置の二次イオン質量分析計を用いた軽元素同位体分析を立上げ,各班との研究者と共同研究を開始する事に成功した.また,水素拡散炉を用いたアパタイト結晶の水素拡散挙動を明らかにする研究も順調にスタートし,C軸方向の水素拡散係数の温度依存性を明らかにし,投稿論文を1件掲載するに至っている.現在,結晶異方性と結晶水濃度の違いによる水素拡散挙動を明らかにする事に成功し,投稿論文を準備中である. 以上のように高温高圧実験生成物や天然マントル試料のあらゆる鉱物及びガラスに対応したイオン注入法による標準試料作成と二次イオン質量分析計による水素定量分析及び同位体分析法を融合し、構造物性班、同位体班、元素分配班の実験試料、天然試料の微量水素,炭素定量分析を行う体制が整い,分析拠点の一つとして有機的に本公募研究が結びついた応用研究が期待できるものと確信している.
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Strategy for Future Research Activity |
高温高圧実験生成物や天然マントル試料のあらゆる鉱物及びガラスに対応したイオン注入法による標準試料作成と二次イオン質量分析計による水素定量分析及び同位体分析法を融合し、構造物性班、同位体班、元素分配班の実験試料、天然試料の微量水素,炭素定量分析を開始したが,わずか2年という短期間で成果として投稿論文にまとめるためには,期間が短いのは否めない.しかし,分析拠点の一つとして有用に運用を開始したことで,他の班との連携も開始しはじめようとしている.これまで結晶やガラス内の水素や炭素の拡散や分配の挙動をおう事が困難であった領域に対し,新しい展開が期待されるものと確信している. 高温高圧合成試料を用いた水素,炭素の結晶間及び結晶ーメルト間の分配や同位体分別を解明する研究は,順調に温度圧力時間の実験条件の最適化をSIMSによる水素同位体マップにより評価する事に成功し,当初研究計画にあったとおり,軽元素分析拠点の一つとして本公募研究により展開している.今後は,ダイヤモンドやケイ酸塩ガラスなどの炭素同位体や炭素定量分析を行い,共同研究を行っていく予定である.
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Research Products
(13 results)