2016 Fiscal Year Annual Research Report
糖関連中分子の位置選択的精密合成
Publicly Offered Research
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
16H01148
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 善弘 京都大学, 化学研究所, 助教 (90751959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機化学 / 天然物化学 / 配糖体 / 位置選択性 / 中分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、糖関連物質の合成において不可避であった多段階の保護-脱保護に基づかない、無保護糖の連続位置選択的官能基化に基づく新しい逆合成解析により、生理活性配糖体中分子の効率的合成法の開発を研究対象としている。この達成により、同一官能基の反応性をも制御し得る有機合成化学の力を示すとともに、合成の煩雑さが発展を妨げている糖質科学の発展に貢献する事を目的としている。今年度は我々の研究室ですでに開発されていた無保護グルコースを用いる光延条件グリコシル化の一般化及び詳細なメカニズム解析を行った。その結果、多種の無保護糖(マンノース、ガラクトース、キシロース等)に対してSN2型でグリコシル化反応が進行することを見出した。また、本グリコシル化は溶媒依存で反応経路が異なることを明らかにした。すなわち、比較的低極性のジオキサン中ではSN2型で、高極性のDMF中ではSN1型で反応が進行する。さらに、確立したグリコシル化反応を適用し、天然アシルグリコシド(thotneoside C、tecomin、perilloside B)及び天然フェノールグリコシド(skimmin、apigenin 7,4'-di-O-glucosides)の一段階立体選択的合成を行った。このうちtecomineの合成についてはグラムスケールでの実施も可能であった。さらに抗腫瘍活性二量体エラジタンニンcoriariin Aの全合成の鍵反応である、アグリコン部ジカルボン酸のダブルグリコシル化が高いβ選択性で進行する条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、本研究の基盤である無保護糖を用いる光延条件グリコシル化の一般化とメカニズム解析が完了し、どの程度の基質に適用可能か予測がつきつつある。特にメカニズムに関しては、溶媒依存で立体選択性発言メカニズムが全く異なることを明らかとしている。本結果は標的としていたβグリコシドだけでなく、βの糖を基質とすればαグリコシドも立体選択的に合成可能であることを示唆しており、重要な知見と言える。また、申請段階で合成ターゲットとしていた配糖体天然物の半数の合成を達成しており、想定している研究課題は達成可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、前年度に築いた無保護糖のグリコシル化及び当研究室で独自に開発された触媒的位置選択的アシル化を駆使し、抗腫瘍活性二量体エラジタンニンcoriariin Aの全合成に取り組む。前年度のグリコシル化の一般化において、無保護グルコースを用いるアグリコン部ジカルボン酸のダブルグリコシル化が高いβ選択性で進行する条件を見出しているため、これを基質とした触媒的位置選択的ダブルアシル化の条件を精査する。また、coriariin Aの全合成で得られた位置選択性に関する知見を活かし、DNAトポイソメラーゼ阻害活性を有する(-)-vescaradin の全合成に取り組む。さらに、N-アセチルグルコサミンを基質としたアスパラギン誘導体の立体選択的グリコシル化に関しても検討を行う。糖ペプチドの効率的合成への展開を目的として、ジペプチドを含むオリゴペプチドのグリコシル化に関しても検討を行う。
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Research Products
(11 results)