2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ中員環アルキンのクリック反応を基盤とする分子ハイブリッド化法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Middle molecular strategy: Creation of higher bio-functional molecules by integrated synthesis. |
Project/Area Number |
16H01158
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
友岡 克彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (70207629)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 中分子ユニット / クリック反応 / 分子ハイブリッド化 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子ハイブリッド化法の仕組みとして,高歪みの中員環アルキンとアジドの付加環化反応(Huisgen反応)を利用したクリック反応は極めて重要であるが,中員環アルキンの合成や安定性,反応の選択性に難があった.これに対して本研究では,従来の欠点を解消した新型中員環アルキンとして環内と環上に計三つのヘテロ官能基を有する中員環アルキンAを考案した.そのクリック反応性は,その環員数と環内のヘテロ官能基の選択で広範囲に調節可能と考えられる.またA には,ヘテロ官能基を介して,もしくは,クリック反応によって最大四分子を効率的にハイブリッド化できると期待される.そこで本年度は,まず,アルキンAの基本である「環内に二つの窒素官能基を有する9員環のアルキン」4,8-diazacyclononyne(DACN)や,「DACN環上にヒドロキシ基を導入した」6-hydroxy-4,8-diazacyclononyne(DACN-OH)などの合成の効率化を検討した.その結果,市販の2-butyne-1,4-diolのコバルト錯体化,1,3-ジアミン誘導体との二重Nicholas反応,コバルトの除去,の三工程をワンポットで収率良く行うことに成功し,高効率合成法を確立した.また,DACNやDACN-OHのクリック反応性について,ベンジルアジドとの反応を検討した結果,これら両者は9員環でありながらBertozziらが開発した8員環アルキンOCTよりも速やかに反応することが,一方,通常の取扱いにおいてはOCTよりもはるかに安定であるという優れた特性を有していることが明らかになった.本年度においてはまた,DACN, DACN-OHの誘導化,機能性分子合成への応用についても種々検討し,良好な成果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子ハイブリッド化に求められる反応性,多機能性,さらに,合成の容易さから両プロパルギル位にヘテロ官能基(X, Y)を,また環上にヘテロ置換基Zを有する中員環アルキンAを設計した.そのアルキン部位のクリック反応性は環員数とヘテロ官能基の種類を選択することで自在に調節することができる.すなわち,環員数の大小によってアルキンの歪みが増減し,反応性が大きく変化する.また,ヘテロ官能基の種類によってC-X-C, C-Y-C結合の結合長と結合角が増減するとともに,ヘテロ原子-炭素の反結合性軌道(σ* C-X, σ* C-Y)とアルキンπ軌道との超共役状態が変わり,アルキンの反応性が変化することを明らかにした.またそれらの構造-反応性の相関をDFT計算によって推定し,アルキンAの構造設計に利用することにも成功した.アルキンAの基本であるDACNや,その環上にヒドロキシ基を導入したDACN-OHなどの合成を,市販の2-butyne-1,4-diolのコバルト錯体化,1,3-ジアミン誘導体との二重Nicholas反応,コバルトの除去,の三工程をワンポットで収率良く行うことに成功し,高効率合成法を確立した. この様にして合成されたDACNは関東化学株式会社より市販され,多くの研究者が容易に利用できる様になっている.また,DACNやDACN-OHのクリック反応性について,ベンジルアジドとの反応を検討した結果,これら両者は9員環でありながらBertozziらが開発した8員環アルキンOCTよりも速やかに反応することが,一方,通常の取扱いにおいてはOCTよりもはるかに安定であるという優れた特性を有していることが明らかになった.本研究ではまた,DACN, DACN-OHの誘導化,機能性分子合成への応用についても種々検討し,良好な成果を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,新型ヘテロ中員環アルキンAに関して,アミノ酸型クリック反応素子Bへの誘導化とその応用,および,生体機能解明の分子プローブとしての利用について検討する計画である. ① アミノ酸型クリック反応素子Bへの誘導化とその応用:中員環アルキンAの二つのアミンの一方に末端にカルボキシル基を有するアルキル鎖を,もう一方に除去容易な保護基(Fmoc基など)を導入したアミノ酸型クリック反応素子Bを合成し,その両側にアミド結合を介してアミノ酸,ペプチド,各種機能性分子を導入することで多様な機能性クリック反応素子としての利用を図る. ②生体機能解明の分子プローブとしての利用: 中員環アルキンAに機能性部位を導入し,それを用いて生体機能の解明に取り組む.具体的には,アジド側に生体機能部位を導入し,アルキン側に可視化のための蛍光発色部位,単離・精製のためのアフィニティタグ部位,親水性や膜透過性を得るための部位,もしくはバイオイメージングに必要な固定化部位を組み合わせて導入する.一方,アジド側に蛍光発色部位もしくアフィニティタグ部位を導入する場合には,アルキン側に生体活性部位と,親水性や膜透過性を得るための部位やバイオイメージングに必要な固定化部位を組み合わせ導入する.また,アルキン側に2種の生体活性部位を導入してビバレント活性解析に利用することも検討する.
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Research Products
(6 results)