2016 Fiscal Year Annual Research Report
Spacecraft Surface Charging Model Predictions based on Interaction Processes between Spacecraft Systems and Space Weather Phenomena
Publicly Offered Research
Project Area | Solar-Terrestrial Environment Prediction as Science and Social Infrastructure |
Project/Area Number |
16H01179
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三宅 洋平 神戸大学, 計算科学教育センター, 准教授 (50547396)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 衛星帯電 / 宇宙プラズマ / プラズマ波動 / 超高層物理学 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代の宇宙天気予報システムの構築に向け、太陽活動度によりダイナミックに変動するプラズマ環境と、衛星障害の原因となりうる衛星帯電現象の間の物理的相関を明らかにすることが、必要不可欠である。H28年度は、地球磁気圏内に生起するプラズマ波動現象が衛星帯電に及ぼす影響を、3次元の大規模プラズマ粒子シミュレーション解析により高精度にモデル化することに成功した。主な成果は以下の通りである。 ①バンアレンプローブによる最近の観測ではコーラス波動の検出と同時刻に衛星電位の変動が確認された。この詳細な物理機構を解明するために、粒子モデルに基づく大規模プラズマシミュレーションにより当該現象を再現した。結果として、右回り円偏波を持つ波動電界に対して、光電子電流の変調とそれに起因する衛星電位変動を再現することに成功した。また高周波シースの理論を応用することで、本現象の理論的なモデル化を行った。初期結果として、波動電界強度が200 mV/m以下の衛星電位変動を良く説明できる定式化を得た。 ②上述の現象も含め、実際の人工衛星の帯電過程と、それが衛星運用に及ぼす影響を正確に評価するには、衛星に搭載された種々の測器を含めた詳細な数値モデルが必要である。しかし例えば科学衛星に搭載される電場プローブなどの観測装置の詳細形状を取り込むのは、プラズマじょう乱現象との空間スケール差のために非常に困難である。そこでこれまでの研究で得られた技術的知見を集積し、境界要素法とプラズマ粒子計算手法を組み合わせるImmersed Boundary Element (IBE) 法により、上述の問題を解決できることを示した。本成果により、複雑な構造を持つ人工衛星とプラズマの相互作用を数値的に再現することが可能な、PIC-IBEシミュレーション手法が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より2年間の課題実施期間で地球電磁気環境じょう乱と衛星帯電現象の物理的相関を明らかにする目的で、①磁気圏プラズマ波動現象、および②高エネルギー粒子フラックス、の影響を評価することを計画しており、H28年度はこのうち①の数値モデル構築をほぼ達成することができた。構築された数値モデル結果は、過去の科学衛星観測で得られた知見とも良い傾向の一致を示している。今後、日本が実施する内部磁気圏探査ミッション「あらせ」による科学衛星観測との詳細な比較研究により、本数値ツールが地球電磁気環境じょう乱とその中での衛星帯電現象の物理機構の解明に寄与できると期待される。このことから、当初設定した「研究の目的」に照らしてもおおむね順調に進展していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、衛星近傍環境解析に基づく衛星帯電予測を主軸とし、特に新学術領域「太陽地球圏環境予測」の研究班A03に所属する研究協力者との連携により、地球内部磁気圏もしくは電離圏中の衛星帯電現象に着目する。具体的には次のように課題を遂行する。 ①プラズマ波動中の衛星帯電シミュレーションとあらせ衛星観測データとの連携解析 2016年に打ち上げられた「あらせ」衛星による内部磁気圏環境の「その場」計測データと衛星帯電シミュレーションデータの比較検討することにより、衛星周辺プラズマじょう乱が衛星「その場」観測に及ぼす影響を明らかにする。具体的には、コーラス波動受信時の波動電界強度と衛星電位を電場プローブデータから取得し、H28年度に再現したプラズマ波動電界に起因する衛星帯電変動が現実の状況で起こりうることを定量的に実証する。また衛星プラズマ相互作用が衛星電場計測に及ぼす影響を数値シミュレーションにより明らかにし、あらせ衛星観測データの較正や物理解釈に応用する。 ②衛星帯電に対する高エネルギー粒子フラックスの影響評価 地球電磁気環境のじょう乱時に見られる高エネルギーの粒子フラックスが衛星近傍プラズマ環境と衛星帯電に及ぼす影響を評価する。具体的には、サブストームに伴って磁気圏尾部から導入される高温プラズマや、極域におけるオーロラ電子降下を想定し、計算モデルに高速の電子流を新たな粒子種として追加して計算機実験解析を実施する。高エネルギー電子の降りこみに起因する衛星近傍環境変動としては、衛星電位が低下することによるシース構造の変化や、二次電子の放出による電子雲形成が想定される。これらのローカルプラズマ環境変動が背景の低温プラズマフラックスを変化させ、衛星浮遊電位にフィードバックされる過程をも含めて再現し、高エネルギー粒子環境が衛星帯電に影響を及ぼす物理機構を包括的にとらえる。
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Remarks |
当研究課題による学術論文[Miyake and Usui, Radio Sci., 2016]がRadio Science誌のEditor's highlightに選出された。関連情報掲載Webページは http://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/hub/article/10.1002/2016RS006095/editor-highlight/
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