Outline of Annual Research Achievements |
中間圏・熱圏での大気微量成分の中で, 二酸化炭素(CO2), オゾン(O3), 一酸化窒素(NO), 水素酸化物(HOx)は地球環境変動の影響により, また, 太陽・地磁気活動によっても大きく変動する。これらは中間圏・熱圏での大気のエネルギー収支やその結果生じる大気運動において重要な役割を果たすことが知られている。 本研究グループでは, 大気大循環モデル(GCM)へCO2やNOからの赤外放射冷却機構を取り入れ, 種々のシミュレーションを実施してきた。同シミュレーションをさらに高精度に実施し, また, 太陽プロトン現象などの高エネルギー粒子の流入によって生じる大気変動を理解するため, 新たにHOxのモデル化を行うに至った。 本研究での最大の興味である高エネルギー粒子の影響のモデル化を最優先で行うことが好ましいと考え, 最新の手法(Fang et al., 2010, 2013など)を用いた数値コード開発を実施した(太陽活動変化による影響は, ひとまずこれまでに開発したNO光化学モデルと同様のパラメータ化の手法を踏襲することとした)。これにより, 100 eV から1 MeVまでのエネルギーを持った降下粒子による電離率の高度プロファイルが推定可能となり, HOx変動が計算可能となる。28年度にはまた, HOx変動と関係の深い化学過程を吟味した。これまでに開発したNOの1次元モデルのテストランを実施し, HOxへの拡張の手順を確認した。 本研究の成果は, 日本地球惑星科学連合, 地球電磁気・地球惑星圏学会等で公表されたほか, PSTEPプロジェクト関連の研究会にて研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HOx変動の要因として, 太陽活動変化(紫外線量の変化)や高エネルギー粒子の流入が考えられる。これまでに開発を進めてきたNO光化学モデルでは, 太陽活動変化による電離率をパラメータ化しNO変動を推定した。HOxモデルでもその方法を踏襲し, 本研究での最大の興味である高エネルギー粒子の影響のモデル化を最優先で行うことが好ましいと考え, 最新の手法(Fang et al., 2010, 2013など)を用いた数値コード開発を実施した。これにより, 100 eV から1 MeVまでのエネルギーを持った降下粒子による電離率の高度プロファイルが推定可能となり, HOx変動が計算可能となる。28年度にはまた, HOx変動と関係の深い化学過程を吟味した。これまでに開発したNOの1次元モデルのテストランを実施し, HOxへの拡張の手順を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に開発した数値コード(高エネルギー降下粒子による電離率の計算コード)とこれまでに開発してきた1次元光化学モデルとを統合し, HOx変動を定性的に理解可能な数値モデルを作成する。太陽活動変化や高エネルギー降下粒子によるHOx高度プロファイルの変化, 及び乱流拡散による影響等の概要を1次元モデルの計算から調べる。NOに関してのモデルは, GCMへ組み込まれ, 緯度・高度変化等が推定可能であることが確認された。1次元モデルでの光化学過程をGCM+NOモデルへ組み込み, HOxの時空間変動のシミュレーションを試みる。 本研究は, 連携研究者, PSTEP関連研究者, および学界での関連分野の研究者と情報・意見交換し実施する。計算機シミュレーションは既存のワークステーションや28年度に導入した計算機により実施する。上記研究者との情報・意見交換が円滑にできるようノートPC等でも計算結果の解析や表示(可視化)ができるよう研究環境を整備する。 本研究課題の研究成果は, 日本地球惑星科学連合, 地球電磁気・地球惑星圏学会等の学会, およびPSTEPプロジェクト関連の研究会にて公表予定である。
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