2016 Fiscal Year Annual Research Report
隔離膜伸展におけるユビキチン様修飾システムの役割
Publicly Offered Research
Project Area | Multidisciplinary research on autophagy: from molecular mechanisms to disease states |
Project/Area Number |
16H01195
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 邦律 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20373194)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オートファジー / ユビキチン様システム / Atg4 / 隔離膜 / オートファゴソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
ユビキチン様タンパク質Atg8(autophagy-related 8)は細胞内分解システムであるオートファジーに必須なタンパク質であり、オートファジーを担う中心的なオルガネラであるオートファゴソーム(AP)の形成に機能している。オートファジーのシステムは真核生物に広く保存されているが、申請者は分子生物学的・遺伝学的に多くの知見が蓄積されている出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いてAP形成の根本となる分子機構の解明を進めている。Atg8は合成された後、Atg8のC末端の切断を担うペプチダーゼ/アミダーゼであるAtg4によって切断を受け、グリシンが露出したAtg8G116となる。Atg8G116はユビキチン様タンパク質修飾システムを介してリン脂質phosphatidylethanolamine(PE)と共有結合しAtg8-PEとなる。Atg8-PEは再びAtg4による切断を受けAtg8G116となって再利用される。このように、Atg4は二段階の切断を介してAP形成に関わっている。 APは中間構造体である隔離膜が伸展することにより形成される。最近になって、我々は自身の開発した隔離膜可視化法を使用して、隔離膜伸展にAtg4によるAtg8-PEの切断が必要であるという結果を得た(Hirata and Suzuki, under revision)。 平成28年度は、成熟が早くかつ蛍光の明るい蛍光タンパク質を使用する工夫と、Atg4の活性中心の変異体を使用してAtg4の酵素活性を低下させAtg8-PEに結合している時間を延長する工夫を施すことで、Atg4が隔離膜に局在することを明らかにした(未発表データ)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Atg4の局在を明らかにするために、成熟が早くかつ蛍光の明るい緑色蛍光タンパク質mNeonGreenを使用したところ、Atg4がオートファジー関連構想帯に局在することが明らかとなった(未発表データ)。また、Atg4の活性中心C159, D334, H336に変異を導入することで酵素活性を低下させAtg8-PEに結合している時間を延長することで局在を同定することにも成功した(未発表データ)。 続いて隔離膜可視化法を使用してAtg4の局在を詳細に観察した。この手法は、隔離膜を基準にしてAtgタンパク質の局在を分類するものであり、これまで知られているAtgタンパク質のパターンは、(1)隔離膜と液胞との接点への局在(vacuole-isolation membrane contact site; VICS)、(2)隔離膜との共局在、(3)隔離膜の縁へのドット状の局在(isolation membrane edge; IM edge)の三種類である。その結果、Atg4が隔離膜パターンを示したことから、Atg8-PEの切断自体が隔離膜の伸展に寄与している可能性が考えられた(未発表データ)。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、平成28年度の研究は順調に進捗しているので、今後の研究も当初の計画通りである。まず、Atg4のAtg8-PE切断活性が異常な変異体のスクリーニングに着手する。Atg4にランダムな変異を導入すると共に欠損変異体を作製する。スクリーニングの戦略は極めてシンプルである。変異を導入したAtg4発現プラスミドをatg4破壊株に導入し、得られたコロニーからタンパク質を抽出しウェスタンブロット解析に供する。Atg4の活性に欠損のある株はオートファジー活性がなくなるので、オートファジー活性の指標となる液胞酵素アミノペプチダーゼⅠ(Ape1)の成熟が不能となる。またAtg8-PEの生成も同一のメンブレンで確認可能である。つまり、Atg8-PEの生成は見られるがApe1の成熟に欠損のある株が目的とする変異体である。申請者はAtg1の温度感受性変異体を取得する際に同じ手法を用いた経験がある。Atg1は897個のアミノ酸残基からなるタンパク質であり、その温度感受性変異体中には22カ所の塩基置換が存在した。そのうち同義置換が13カ所、非同義置換が8カ所、C末端近くに終止コドンが導入されていた。つまり、約120塩基(40残基)につき一カ所の塩基置換が生じていることになる。同じ手法で494個のアミノ酸残基からなるAtg4に対して、どの塩基にも一カ所の割合で変異が入ったものを取得することを考えると、約800個のコロニーを調べれば良い計算になる。一日に50株の解析を行うと考えれば約16日を要するので、十分に実現可能なスクリーニングである。
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Research Products
(10 results)