2016 Fiscal Year Annual Research Report
病原菌感染や結合タンパク質を介したsyntaxin17の生理機能の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multidisciplinary research on autophagy: from molecular mechanisms to disease states |
Project/Area Number |
16H01206
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
新崎 恒平 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (70609990)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | syntaxin 17 / レジオネラ / レジオネラエフェクター / Lpg1137 / MAP1B-LC1 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、レジオネラがsyntaxin 17 (Stx17) を分解する意義及びStx17の結合タンパク質を介したStx17の機能解析を目的としている。各々の進捗状況を以下に記載する。 「レジオネラがStx17を分解する意義」においては、昨年度までにStx17を分解するレジオネラエフェクターとしてLpg1137を同定し、Lpg1137がStx17に対するセリンプロテアーゼ活性を有していることを明らかにしている。更に、Lpg1137の発現によりオートファジーが抑制されることも見いだしている。今年度は、Lpg1137が直接的にStx17を標的として分解していることを明らかにした。また、Lpg1137の遺伝子欠損株においてStx17の分解を抑制されることも合わせて明らかにした。更に、Lpg1137の発現はオートファジーの初期段階(オートファゴソーム形成)を抑制していることを見いだした。 「Stx17の結合タンパク質を介したStx17の機能解析」においては、これまでの研究によりMPA1B-LC1をStx17の結合タンパク質として同定し、MAP1B-LC1がオートファゴソーム形成においてStx17の機能を抑制していることを見いだしていた。今年度は、MAP1B-LC1がどのようにStx17の機能を制御しているのかの解明を主体として研究を行い、MAP1B-LC1のリン酸化状態がStx17の機能を制御していることを明らかにした。具体的には、栄養状態においてはMAP1B-LC1はリン酸化をされており、そのリン酸化を介してStx17の機能を抑制していること、一方、栄養飢餓状態になるとMAP1B-LC1が脱リン酸化されStx17との相互作用が消失する結果、オートファジーにおけるStx17の機能が活性化され結果的にオートファジーを亢進していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「レジオネラがStx17を分解する意義」においては、Lpg1137がStx17を直接的に分解していることを明らかにした。具体的にはリコンビナントタンパク質として精製したStx17及びLpg1137を混合することで、Stx17が分解されることを示した。また、Lpg1137に変異を入れた株及びLpg1137の遺伝子破壊株ではStx17の分解が抑制されることから、Lpg1137がStx17を分解する責任分子であることを明らかにした。また、Lpg1137の発現がオートファジーに与える影響としては、Lpg1137を発現させた細胞において飢餓誘導を行い、オートファジーの初期に形成される隔離膜のマーカータンパク質であるDFCP1の挙動を調べたところ、Lpg1137を発現している細胞では、コントロールの細胞でみられるDFCP1の凝集構造(隔離膜)が形成されなくなった。このことより、Lpg1137がオートファジーの初期段階を抑制していることを明らかにした。 「Stx17の結合タンパク質を介したStx17の機能解析」においては、MAP1B-LCがどのようにStx17の機能を制御しているのかの解明を中心に行なった。これまでの研究により、栄養状態においてMAP1B-LC1はStx17と結合することによりオートファジーを負に制御していることを明らかにしている。イムノブロットにおいて、MAP1B-LC1はダブルバンドとして検出されるが、上側のバンドがリン酸化に由来することを見いだした。また、栄養飢餓状態になると、上側のバンドが有意に消失することから、MAP1B-LC1はリン酸化を介してStx17の機能を制御していることを明らかにした。スクリーニングよりMAP1B-LC1のリン酸化アミノ酸基を同定し、非リン酸化型変異体においてStx17との結合が消失し、オートファジーを抑制できなくなることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
「レジオネラがStx17を分解する意義」においては、Lpg1137のオートファジー以外への関わりを解析する。Stx17は栄養状態においてはミトコンドリア分裂因子であるDrp1と協調して働き、ミトコンドリアの分裂制御に関与している。よって、Lpg1137はStx17を介したミトコンドリア分裂に関わる機能の抑制にも働いている可能性が考えられるので、その可能性を探る。また、Stx17は小胞体ーミトコンドリア接触部位(MAM)に局在し、その機能を発揮しているタンパク質である。Lpg1137はMAMに局在するStx17をターゲットとしていることから、Lpg1137もMAMに局在していることから、Lpg1137にはMAMを標的化するドメインが存在していると考えられる。よって、Lpg1137の部分変異体を作成し、MAM標的化ドメインを同定する。また、当該ドメインがどのような機構によりMAMに局在化できるのかを明らかにすることにより、宿主側のタンパク質を含めた、MAM局在機構を明らかにできる可能性があると考えられる。更に、Stx17と結合はできるが分解が出来ないLpg1137のリコンビナントタンパク質とStx17のリコンビナントタンパク質を用いてLpg1137-Stx17複合体の構造解析にも挑戦する予定である。 「Stx17の結合タンパク質を介したStx17の機能解析」においては、MAP1B-LC1の栄養状態に応じたリン酸化・脱リン酸化を司るカイネース・ホスファターゼの同定を試みる。具体的な案としては、種々のカイネースやホスファターゼのsiRNAライブラリーを用いて栄養状態に応じたMAP1B-LC1のリン酸化状態を評価する。また、MAP1B-LC1は直接的にStx17と相互作用するのか、又は他の分子を介してStx17と結合するのかを明らかにする。
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