2016 Fiscal Year Annual Research Report
腸管寄生性原虫赤痢アメーバにおけるオートファジー遺伝子Atg8の機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multidisciplinary research on autophagy: from molecular mechanisms to disease states |
Project/Area Number |
16H01210
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
津久井 久美子 国立感染症研究所, 寄生動物部, 主任研究官 (00420092)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | autophagy / Entamoeba histolytica / Atg8 / phagocytosis |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは、真核生物に広く存在する生物現象であり、その機能は生命の基本過程に広く関与することが明らかにされている。しかし一部の例は全ての生物における機能の代表ではない。そこで本研究では初期に分化し、ヒト腸管内の嫌気環境に適応した寄生性原虫赤痢アメーバを用い、Atg8の関与する分子過程の解明し、オートファジーの普遍性と多様性を明らかにしたい。 1)Atg8の貪食胞成熟における機能の解明-貪食胞のプロテオーム解析-:Atg8遺伝子発現抑制株と親株からヒト血清コートしたマグネティックビーズを取り込んだ貪食胞を精製し質量分析にかけ、Atg8遺伝子発現抑制株で動員が減少している分子群を同定した。2回の試行から1.5倍以上変化した127タンパク質を見いだした。2)Atg8と赤痢アメーバ代謝系の関与の解明:以前の研究から赤痢アメーバAtg8が解糖系酵素と結合する可能性が示されている。そこでructose1,6-bisphosphate aldolase(ALDO), triose phosphate isomerase (TPI)のタグ融合タンパク質発現株を作成し、Atg8との結合を確認した。さらにグルコース除去条件下、野生型ではALDO, TPI共に活性が60%程度に低下するが、Atg8gs株ではTPIの活性低下が観察されなかった。Atg8による解糖系制御の存在が示唆された。3)Atg8脂質修飾制御機構の解明:Atg5-12複合体構成分子候補の遺伝子発現抑制株を作成したところ、いくつかの遺伝子でAtg8の脂質修飾が変化することが確認された。4)赤痢アメーバにおけるストレス誘導性オートファジーの検討:GFP-Atg8株を用いてストレス誘導性オートファジーが赤痢アメーバに存在するのか、画像解析で検討した。Tor阻害剤の効果を検討したが、再現性を得るための条件検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)Atg8の貪食胞成熟における機能の解明-貪食胞のプロテオーム解析-:同定したタンパク質の一部は貪食胞上に局在が確認されたことから、実験系の妥当性が示され、順調に推移している。2)Atg8と赤痢アメーバ代謝系の関与の解明: Atg8と解糖系酵素の結合が再現し、Atg8遺伝子発現抑制株での異なる制御が明らかになった。赤痢アメーバは嫌気代謝を行うため、解糖系が唯一のATP産生経路である。これまで小胞輸送系との関わりは検討されて折らず、新しい視点を見いだすことができた。3)Atg8脂質修飾制御機構の解明:Atg5-12複合体構成分子候補が実際Atg8脂質修飾に関与していることが示された。赤痢アメーバにユニークな分子も存在しており、独自の制御方法の発見が期待される。4)赤痢アメーバにおけるストレス誘導性オートファジーの検討:条件検討に時間がかかっている。他種生物ではストレス応答によるGFP-Atg8の局在変化を検出することは頻繁に行われているが、赤痢アメーバの実験系では上手く進まなかった。他のトピックと比較すると進展が遅いが、ユニークな現象の発見につながる可能性があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Atg8の貪食胞成熟における機能の解明2)Atg8と赤痢アメーバ代謝系の関与の解明3)Atg8脂質修飾制御機構の解明(Atg5-12複合体構成分子の解析)について、昨年度の結果を元にした解析を進める。また、4)赤痢アメーバにおけるストレス誘導性オートファジーの検討については条件検討を続け、再現性のあるモデル系を確立する。
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Research Products
(12 results)