2016 Fiscal Year Annual Research Report
piRNA生合成経路による翻訳制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | Analyses and regulation of germline epigenome |
Project/Area Number |
16H01214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石津 大嗣 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40574588)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | piRNA / 3'UTR / エピゲノム制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
piRNAは、相補的な配列を持つ遺伝子の発現を抑制する生殖細胞特異的な小分子RNAである。ショウジョウバエをモデルとした解析から、piRNAのほとんどはレトロトランスポゾンの発現抑制を担っているが、約20%のpiRNAは遺伝子の3'非翻訳領域に由来する標的未知のpiRNAであることがわかっている。これまでに、traffic jam(tj)と呼ばれる遺伝子の3'非翻訳領域にpiRNA生合成に必須の100塩基長のシス配列が存在することが示唆されていた。本研究では、piRNA生合成経路による翻訳効率への影響の有無を検証した。ショウジョウバエ卵巣体細胞培養株OSCにおいて、3'非翻訳領域にpiRNAをコードするtjをモデルとして解析を行ったところ、当初の予想に反して、mRNAの分解を引き起こすpiRNA生合成経路が翻訳効率の安定化に寄与していることが示唆された。3'非翻訳領域にpiRNAをコードするmRNAは、ArmiやYbなのどpiRNA生合成因子と結合することで、piRNA生合成経路に誘導される。piRNA生合成因子は3'非翻訳領域の分解を引き起こす一方で、同じ3'非翻訳領域に結合して翻訳抑制に作用するその他のRNA結合タンパク質の結合に干渉することで、翻訳効率の安定化に寄与するという仮説を立てた。以上により、piRNA生合成経路が翻訳効率に関与するエピゲノム制御機構として機能していることが示唆された。同一の3'非翻訳領域に存在する複数の制御エレメント間の相互作用に関して、これまでに詳細な解析は行われていない。OSCにおけるpiRNA生合成経路をモデルとして、新たな研究分野の開拓につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
genic piRNAをコードするtj mRNAの半減期を測定することで、piRNA生合成経路によるmRNA安定化への影響を調べた結果、当初の予想通り、mRNAの分解が促進されていることを明らかにした。その一方で、翻訳効率に対しては、当初の予想に反して、piRNA生合成経路により安定化されることがわかった。これにより、piRNA前駆体をコードするmRNAでは、piRNAシス配列によるその他の抑制性制御エレメントへの干渉作用によって翻訳効率の安定化が起きるという仮説を立てた。 申請者はこれまでにCRISPR-Cas9システムを用いたショウジョウバエ卵巣体細胞由来培養細胞株OSCのノックアウト細胞株の作製方法を確立したが、今回、相同組換えによるノックイン細胞株の作製も可能であることがわかった。これにより、これまで抗体の作製が困難だったpiRNA生合成因子Zucchini(Zuc)に対して、FLAGタグを付加した安定発現株の作製に成功した。Zucは、成熟型piRNAを切り出すエンドリボヌクレアーゼであり、piRNA生合成にとって重要な役割を担う因子であるが、特異的な抗体がなかったことから詳細な機能解析が遅れていた。今回作製した細胞株を用いることで、より詳細なpiRNA生合成機構の解析が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、tj以外のgenic piRNAをコードする遺伝子についてもpiRNAシス配列による翻訳効率の安定化が起こっているかどうかを、リボソームプロファイリングなどのゲノムワイドな手法により調べる。また、piRNA生合成経路によるその他の翻訳抑制機構への干渉に関して、これを検証するために、3'非翻訳領域にpiRNAシス配列とmiRNAの標的配列などの翻訳抑制性制御エレメントを同時にコードしたレポーター遺伝子を作製し、そのpiRNA生合成活性及び翻訳効率を定量する。 piRNA生合成経路がmRNAの翻訳効率に影響することが示唆されたが、genic piRNAの標的配列はほとんど同定されておらず、piRNA経路において副産物として産生されるだけなのかどうかは不明である。genic piRNAの標的配列の同定するために Piwi抗体を用いたhiCLIP (RNA hybrid and individual-nucleotide resolution ultraviolet crosslinking and immunoprecipitation)法を行う。
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Research Products
(4 results)