2016 Fiscal Year Annual Research Report
生殖細胞におけるヒストンバリアントによるゲノムマーキング機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Analyses and regulation of germline epigenome |
Project/Area Number |
16H01219
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 哲仁 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (60596823)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒストンバリアント / 生殖細胞 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年にマウスゲノムに存在する未知のヒストンH3様のバリアント遺伝子を14種同定した。そのうち精巣特異的に発現するH3tが構成するクロマチン構造およびその機能解明を本研究で進めている。本年度ではマウスにおける精巣特異的ヒストンバリアントH3tの解析を重点的に行った。 ヒストンH3tを破壊したノックアウトマウスは見かけ上正常に発育する一方で、雄が無精子症となり完全に不妊となる。H3t欠損により萎縮した精巣および生後10日目マウス精巣を用いた微量RNA-seq解析により、H3t欠損マウスの精巣で発現が優位に低下していた遺伝子は主に第一減数分裂に関わる遺伝子であることが明らかとなった(Ueda et al, Cell Reports., 2017)。さらに、今後の精巣上体切片上でのトランスクリプトミクス解析を想定し、本手法を更に発展させ組織切片上からレーザーマイクロダイセクションによるRNA-seq解析を立ち上げた(Yokota et al, Am J Pathol., 2016)。また、同時に切片上でのエピゲノム解析を行うための準備として、単一細胞レベルでのエピゲノムプロファイリング技術の開発を進めている(特願2016-167967)。 現在までに、H3tの機能解析として、ゲノム上での機能を推察するために、早稲田大学胡桃坂教授らのグループとの共同研究により、ヒストンH3tタンパク質とDNAの複合体(ヌクレオソーム)の構造解析から、体細胞に存在する通常のヒストン-DNA複合体に比べてその結合がやや弱いことが明らかとなっている。これらのことから、ヒストンH3tの化学的性質が精子形成の第一減数分裂に寄与していることが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新規ヒストンH3バリアントH3tが精子形成に必須であることを明らかにし論文化した(Cell Reports 2017)。さらに、H3tは染色体に最も多く含まれるH3.1に比べ不安定なヌクレオソームを形成することを示した。この結果、ヒストンバリアントがエピゲノム因子の一つとして精子形成を制御していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
生殖細胞におけるH3バリアントのエピゲノム解析として、平成29年度はヒト精巣組織特異的ヒストンバリアントであるH3T及びH3.5を対象とする。精巣組織でさらに10サンプル程度の解析をH3.5、H3T及びコントロールとしてH3.3のChIP-seq解析とmRNA-seqを行う予定である。 射出精子を用いたChIP-seq解析については、凝縮したクロマチンを弛緩させるためにまずプロタミンの除去が必要となるが、すでに報告されている精子を用いたChIP-seq解析法を参考にする。ただし現法では、DTTを大量に加える等、ChIPにおける抗体反応に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、より温和な条件で精子クロマチンを弛緩させる方法の確立を検討する。これまでペロンを用いた方法により、射出精子の7割程度のクロマチンが弛緩することを確認している。これら2つの方法を使い分けることで、精子クロマチンのChIP-seq解析を行う予定である。 同時に、ヒトH3Tの機能予測のために、先行研究で明らかにしたマウスH3tの機能解析を進める。生殖細胞特異的ヒストン結合分子の同定として、マウス精巣組織を用いてH3t抗体アフィニティクロマトグラフィーにより、結合因子を精製し、微量かつ網羅的質量分析により候補因子の直接同定を試みる。組織サンプルをNP40/低塩濃度バッファーで溶解させて、クロマチン分画と可溶性分画に分ける。可溶性分画には、ヒストンバリアントを運び、クロマチンへの取り込みを行うヒストンシャペロンを含んでいることが期待される。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Periostin Promotes Scar Formation through the Interaction between Pericytes and Infiltrating Monocytes/Macrophages after Spinal Cord Injury.2017
Author(s)
Yokota K, Kobayakawa K, Saito T, Hara M, Kijima K, Ohkawa Y, Harada A, Okazaki K, Ishihara K, Yoshida S, Kudo A, Iwamoto Y, Okada S.
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Journal Title
Am J Pathol.
Volume: 187
Pages: 639-653
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Testis-Specific Histone Variant H3t Gene Is Essential for Entry into Spermatogenesis.2017
Author(s)
Ueda J, Harada A, Urahama T, Machida S, Maehara K, Hada M, Makino Y, Nogami J, Horikoshi N, Osakabe A, Taguchi H, Tanaka H, Tachiwana H, Yao T, Yamada M, Iwamoto T, Isotani A, Ikawa M, Tachibana T, Okada Y, Kimura H, Ohkawa Y, Kurumizaka H, Yamagata K.
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Journal Title
Cell Rep.
Volume: 18
Pages: 593-600
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Histone H4 lysine 20 acetylation is associated with gene repression in human cells.2016
Author(s)
Kaimori JY, Maehara K, Hayashi-Takanaka Y, Harada A, Fukuda M, Yamamoto S, Ichimaru N, Umehara T, Yokoyama S, Matsuda R, Ikura T, Nagao K, Obuse C, Nozaki N, Takahara S, Takao T, Ohkawa Y, Kimura H, Isaka Y.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 6
Pages: 24318
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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