2016 Fiscal Year Annual Research Report
生殖細胞のヒストン置換に関わる因子の同定および機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Analyses and regulation of germline epigenome |
Project/Area Number |
16H01224
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
品川 敏恵 国立研究開発法人理化学研究所, 石井分子遺伝学研究室, 専任研究員 (70344041)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒストン置換 / ヒストンシャペロン / TH2A / TH2B |
Outline of Annual Research Achievements |
精子形成の過程で、DNAを巻き付けていたヒストンは最終的にプロタミンに置換される。このエピゲノム変化は、ほぼゲノム全体にわたって起きる大規模なもので、機能的精子の形成に重要である。ヒストンの置換は幾つかの塩基性蛋白質への置換を経て段階的に起きるが、そのメカニズムについては不明な点が多い。私達は、体細胞のヒストンH2A/H2Bはまず、生殖細胞特異的なヒストンバリアントTH2A/TH2Bに置換される必要があり、これらを欠損したマウスではヒストンからTNPやプロタミンへの置換が進行せず、成熟精子が形成されないことを明らかにしてきた。H2A/H2Bは自律的にヌクレオソームを形成できないので、ヌクレオソームを形成する際には、H3/H4やDNAの他にNAP1のようなヒストンシャペロンが必要であることが知られている。TH2A/TH2Bの場合も同様と考えられるが、どのようなヒストンシャペロンがTH2A/TH2Bと相互作用するのか分かっていない。本研究では、TH2A/TH2Bのヒストンシャペロンを同定し、ヒストンの置換がどのような仕組みで起きるのか明らかにすることを目的とした。 私達は、リコンビナントのTH2BとH2Bに結合する精巣の核内蛋白質を比較することにより、TH2Bに特異性の高い一群の蛋白質を同定した。この中には既知のヒストンシャペロンが存在しておらず、今後ヒストンシャペロンとして機能するものがあるか調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
精巣にはTH2A/TH2Bが多く発現しているので、それに結合するヒストンシャペロンも他の組織より多く存在するのではないかと推察された。そこで、マウスの精巣を材料に用いて核の可溶画分からリコンビナントTH2AまたはTH2Bに結合する蛋白質複合体の精製と質量分析による同定を行った。リコンビナントTH2Aに結合する精巣の核内蛋白質はH2Aに結合するものとほぼ同じだった。一方、リコンビナントTH2Bに結合する核内蛋白質には、H2BよりもTH2Bに優先的に結合する蛋白質があった。これらについては抗体を用いてウエスタンブロットを行い候補の蛋白質がTH2Bと複合体を形成しているかどうか確認した。TH2Bに優先的結合する蛋白質の中に既知のヒストンシャペロンは存在していなかった。 私達は以前、TH2BはH2AよりもTH2Aに親和性が高いことを報告しており、これまで生体内でもTH2BはTH2Aとヘテロダイマーを形成していると推測してきた。しかし、リコンビナントTH2Bに結合した蛋白質の中にTH2Aは含まれておらず、TH2AとTH2Bがそれぞれ独立に機能している可能性が高くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒストンシャペロン活性の測定 生理的塩濃度下でDNAとヒストンを混ぜても、単に凝集するだけでヌクレオソーム構造を取らない。ヒストンシャペロンかどうかの基準の一つは、このDNAとヒストンの非特異的凝集の形成を阻害し、すでに形成された凝集を解消する活性を持っていることである。DNA断片とリコンビナントH2A, TH2B, H3, H4の混合物にヒストンシャペロン候補のリコンビナント蛋白質を加えて反応させ、電気泳動して凝集の形成が阻害・解消されたか調べる。TH2Bに対する特異性を調べるためH2A, H2B, H3, H4の混合物を用いた場合と比較する。 ヌクレオソームからTH2Bを除去する活性を調べる。ビオチン化した5S DNA断片とリコンビナントH2A, TH2B, H3, H4を用いてsalt-jump透析法でモノヌクレオソームを形成させた後、磁気ビーズに固定する。ここに候補のリコンビナント蛋白質を加えてTH2A/TH2Bが可溶画分に現れてくるか調べる。 ヒストンシャペロン遺伝子欠損マウスの作製とChIP-sequence CRISPR/Cas法または相同組換えによりヒストンシャペロン遺伝子のノックアウトマウスを作製する。ヒストンシャペロン遺伝子欠損マウスの精母細胞を用いてTH2BのChIP-sequenceを行い、TH2Bの分布がどう変化しているか、特にX染色体に注目して調べる。
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Research Products
(1 results)