2016 Fiscal Year Annual Research Report
フロリゲン制御における2つの鍵転写因子の機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Multidimensional Exploration of Logics of Plant Development |
Project/Area Number |
16H01228
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 光知 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (20343238)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 花成 / フロリゲン / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の栄養成長から生殖成長への相転換(花成)は、葉において産生されたフロリゲン(FTタンパク質)が茎頂部へと輸送されることによって調節されている。本研究課題では、フロリゲン機能を理解する上で最重要な「葉」と「茎頂」において、シロイヌナズナで鍵となる2つの転写因子に焦点を当てる。「葉」におけるフロリゲン産生過程ではFE(Abe et al., 2015)に、「茎頂」におけるフロリゲン受容過程ではFD(Abe et al., 2005)に注目する。「葉」において機能するMyb型転写因子FEの機能解析を通じて、フロリゲン遺伝子(FT遺伝子)の転写活性化における新たな制御機構、新たな制御階層を見出す。また、茎頂ではたらくbZIP型転写因子FDの機能解析では、先端的な可視化技術を採用し、茎頂部におけるフロリゲン機能領域の同定を目指していく。フロリゲン機能制御における鍵因子である両転写因子の解析によって、植物固有の発生現象である花成の分子的理解をより深化させ、新たな発生ロジックを提唱することを目指していく。 平成29年度までに、FEとヒストン修飾制御因子との遺伝学的、生化学的相互作用の検討を行い、エピジェネティックな側面からFEによるFT転写活性化の仕組みを検討した。その結果、FT遺伝子の転写制御において、ヒストン修飾を介した新たな制御階層が存在することが明らかになった。また、改変BiFC法によって茎頂部におけるFD-FT相互作用領域を探索し、FDがFTとタンパク質複合体を形成する細胞においてAP1の発現が誘導されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フロリゲン機能を理解する上で最重要な「葉」と「茎頂」において、シロイヌナズナで鍵となる2つの転写因子FEとFDに焦点を当てて研究を進めてきた。 「葉」でのFE機能に関しては、平成29年度までに野生型とfe変異体におけるFT遺伝子座ヒストン修飾の比較解析、ならびにFEとヒストン修飾制御因子との遺伝学的、生化学的相互作用の検討を行い、エピジェネティックな側面からFEによるFT転写活性化の仕組みの理解に取り組んだ。その結果、FT転写活性化に際し、ヒストン修飾を介した新たな制御階層が存在することを示唆する結果を得ることができた。 FDによる茎頂部でのフロリゲン機能制御についても重要な知見を得ることができた。改変BiFC法を採用し、形質転換シロイヌナズナを用いてFD-FT複合体形成領域の可視化に取り組んできたが、今年度は、茎頂部におけるFD-FT相互作用領域の探索の結果、FDがFTとタンパク質複合体を形成する細胞においてAP1の発現が誘導されることを確認することに成功した。これまで、FD-FT複合体の各構成要素の発現でしか確認できなかった茎頂でのフロリゲン機能の理解に大きな進展をもたらす結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記2研究項目について研究を推進し、研究成果をとりまとめ次第、成果として公表する。FEを介したFT転写活性化機構の詳細を解明することにより、ヒストン修飾を介した新たな制御階層の理解に繋げる計画である。現在、クロマチン免疫沈降法によって、FT遺伝子座におけるヒストン修飾動態の詳細な解析を進めている。今後、野生型とfe変異体のヒストン修飾の違いを詳細に解析することで、研究を推進する計画である。また、茎頂でのフロリゲン機能に関しては、FD-FT複合体を可視化し、その動態の時空間的観察が可能となった現在、成長相転換の分子的実体を本質的に理解するための新たな取り組みを開始する予定である。
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