2016 Fiscal Year Annual Research Report
オーキシン不均等分布に依存しない偏差成長誘導機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Multidimensional Exploration of Logics of Plant Development |
Project/Area Number |
16H01231
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
酒井 達也 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10360554)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光屈性 / フォトトロピン / オーキシン / 遺伝子発現 / 突然変異体 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の芽生えは発芽後、効率よく光合成を行うために地上部を光源方向に向かって成長させ、根は発芽後の乾燥を避け水分や栄養を吸収するために光源方向を避けるように大地方向に向かって成長させる、いわゆる光屈性を示す。我々は、モデル植物シロイヌナズナ芽生えの胚軸光屈性がオーキシン不均等勾配に依存した偏差成長に加え、オーキシン不均等勾配形成に依存しない偏差成長によっても誘導されることを最近明らかにした。また、根の光屈性はオーキシン不均等分布を形成せず、オーキシンを介さない遺伝子発現調節が関与することが示唆された。そこで本研究は、第一に光屈性誘導に働く青色光受容体フォトトロピン活性化に依存した遺伝子発現調節を網羅的転写産物解析によって明らかにすることを試みた。恒常的活性型 phot1 発現誘導に依存した転写調節の網羅的解析をRNA-seq 法により行った。その結果、およそ30 遺伝子について phot1 シグナルに応答した転写制御を発見した。第二に、オーキシン不均等勾配非依存的光屈性誘導に関与する新しい遺伝子の同定を新たな突然変異体選抜による分子遺伝学的解析によって行うことを試みた。選抜した 9 株のエンハンサー突然変異体の突然変異の網羅的解析を、次世代シークエンサーを用いたゲノムリシークエンスにより行った。その結果、2株が同じ PP2C 遺伝子のナンセンス変異を示した。ラフマッピングの結果も当該遺伝子が原因遺伝子である可能性を示唆した。また他の株のうち 2 株は既存の光屈性関連遺伝子 nph4/arf7 の変異を示した。残り5 株については変異箇所を複数特定できたものの原因遺伝子特定には更なる検証を必要とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)フォトトロピン活性化に依存した遺伝子発現調節の解析 恒常的活性型 phot1 発現誘導に依存した転写調節の網羅的解析をRNA-seq 法により行った。その結果、およそ30 遺伝子について phot1 シグナルに応答した転写制御を発見した。 (2) pin3 pin7/d6pk エンハンサー突然変異体の分子遺伝学的解析 選抜した 9 株のエンハンサー突然変異体の突然変異の網羅的解析を、次世代シークエンサーを用いたゲノムリシークエンスにより行った。その結果、2株が同じ PP2C 遺伝子のナンセンス変異を示した。ラフマッピングの結果も当該遺伝子が原因遺伝子である可能性を示唆した。また他の株のうち 2 株は既存の光屈性関連遺伝子 nph4/arf7 の変異を示した。残り5 株については変異箇所を複数特定できたものの原因遺伝子特定には更なる検証を必要とした。
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Strategy for Future Research Activity |
phot1 活性化に応答した転写制御を受ける遺伝子については、およそ15 遺伝子程度をピックアップし、プロモーター・レポーター融合遺伝子の作成及び発現解析を行う。根の光屈性誘導時に光照射側、陰側での発現パターンに違いが見られるか、またその転写制御が phot1 依存的か検証する。またピックアップした遺伝子のシロイヌナズナ遺伝子破壊株の表現型観察によって、光屈性反応への関与を検証する。7 株 のpin3 pin7/d6pk エンハンサー突然変異体で原因遺伝子候補について、それぞれの遺伝子破壊株を収集し表現型を観察することによって原因遺伝子特定を行う。また今回同定された PP2C 遺伝子については、今後遺伝子機能解析を進め、光屈性応答に関与する新たな因子の詳細を報告したい。
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Research Products
(5 results)