2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物の組織形成を規定するリン酸とピロリン酸の濃度バランス
Publicly Offered Research
Project Area | Multidimensional Exploration of Logics of Plant Development |
Project/Area Number |
16H01235
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前島 正義 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (80181577)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プロトンポンプ / ピロホスファターゼ / 液胞膜 / ピロリン酸 / 形態形成 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリン酸(PPi)加水分解酵素の機能欠失株の研究から、PPiが関わる代謝は植物の形態形成に大きな影響を与えることが明らかになった。PPiは核酸、タンパク質、多糖の生合成、脂肪の代謝の過程で生ずる代謝副産物である。PPiを反応系から除去できなければ、これらの高分子合成は停止または抑制される。一方、植物にはPPiを必要とする酵素も存在し、PPi濃度の過度な低下も生育に負の影響を与える。細胞質PPiを加水分解する酵素として液胞膜H+輸送性ピロホスファターゼ(H+-PPase: FUGU5)と可溶性ピロホスファターゼ(sPPase: PPa1~PPa5)が存在する。これらの酵素によって適切なPPi濃度が維持される機構を明らかにし、単純な無機化合物による形態形成制御という現象を深く理解することを目的とする。 組織中のPPi定量実験により、H+-PPaseとsPPaseの二重破壊株では、PPi濃度が野生型の6倍、fugu5 株の3倍もの極めて高い値であるのに対し、sPPase欠失株の一種 ppa1 株は野生型と同程度であった。この結果は、H+-PPaseとsPPaseがともにPPi加水分解に寄与し、細胞質PPi濃度の抑制に働くという仮説を強く裏付ける。上記二重変異株ではデンプンが過剰蓄積するが、この現象がfugu5株でも見られることを発見した。 VHP1が殆ど検出されない根端コルメラ領域において、この領域特異的にVHP1を発現させた株では、糖制限下において、デンプン量がコントロールと比較して減少することを見出した。コルメラ領域では、VHP1を発現させないことでPPi濃度を高く保ち、糖欠乏時にもデンプンの合成を促進し、分解を抑制するよう調節されていると推定される。この結果は、PPi濃度が組織あるいは細胞で一様ではなく、細胞の機能に応じて調節されていることを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
無機ピロリン酸PPiの濃度調節には液胞膜のH+-PPaseと細胞質の可溶性PPaseが関わると予測し、それぞれの機能欠失株を調製し、さらにH+-PPaseとsPPaseに多重機能欠失株を作出することで、各遺伝子産物の代謝上の機能を検定した。その結果、液胞膜H+-PPaseの働きに大きな役割があることが判明した。細胞質型sPPaseには5種類あり、その役割の大きさを推定していたが、結果は、その推定と異なっていた。すなわち、液胞膜H+-PPaseがどの細胞においても基幹的なPPi加水分解酵素として機能し、各種sPPaseは組織特異性を持ちつつ、液胞膜H+-PPaseの機能を補完する役割を果たしていることが見えてきた。これらの機能分担は、当初想定していなかった成果である。各種sPPaseの組織特異性についても研究成果が得られ、包括的な議論が可能となってきた。以上を総合して、当初の計画以上に進展したと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
液胞膜H+-PPaseと各種sPPaseの多重変異株について、形態、生育度合いも含めて詳細を定量的に解析する。かつそれらの組織におけるPPi濃度の正確な測定方法を改善、確立することで、液胞膜H+-PPaseと各種sPPaseのPPi濃度維持への寄与度を定量的に議論する基盤をつくる。次年度は、これらの知見を論文としてまとめ国際誌に投稿する予定である。 また、これらの酵素の機能欠失株が、アンモニアを含まない培地で生育させると壊死する現象について、壊死に至る過程、特定の組織のみに壊死が生ずる原因を解析する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] A novel-type phosphatidylinositol phosphate-interactive, Ca-binding protein PCaP1 in Arabidopsis thaliana: stable association with plasma membrane and partial involvement in stomata closure.2016
Author(s)
Nagata, C., Miwa, C., Tanaka, N., Kato, M., Suito, M., Tsuchihira, A., Sato, Y., Segami, S. and Maeshima, M.
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Journal Title
Journal of Plant Research
Volume: 129
Pages: 539-550
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Lack of H+-pyrophosphatase causes developmental damage in Arabidopsis leaves in ammonia-free culture medium.2016
Author(s)
Fukuda, M., Segami, S., Tomoyama, T., Nakanishi, Y., Gunji, S., Ferjani, A., and Maeshima, M.
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Journal Title
Frontiers in Plant Science
Volume: 7
Pages: Article 819
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Lack of H+-pyrophosphatase prompts developmental damage in Arabidopsis leaves on ammonia-free culture medium.2016
Author(s)
Fukuda, M., Segami, S., Asaoka, M., Gunji, S., Ferjani, A., and Maeshima, M.
Organizer
17th International Workshop on Plant Membrane Biology
Int'l Joint Research
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