2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物発生におけるサーモスペルミンの機能の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multidimensional Exploration of Logics of Plant Development |
Project/Area Number |
16H01245
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 卓 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20271710)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / サーモスペルミン / 発生・分化 / 突然変異 / 翻訳制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
木部の過剰な分化を示す,シロイヌナズナの矮性変異株acl5の原因遺伝子は,サーモスペルミン合成酵素をコードする。acl5変異に対するサプレッサー変異株sac51-dの解析から,サーモスペルミンはSAC51の翻訳を促進して木部分化を抑えていることが明らかになっている。本研究では,サーモスペルミンの作用の詳細な分子機構と生理機能の解明を目指す。 SAC51ファミリーの各遺伝子mRNAに保存されたuORFを比較すると,SAC51とSACL1のuORFの内部には同じ読み枠で共通してメチオニンのコドンAUGが存在し,これがサーモスペルミン応答に関わるuORFの開始コドンである可能性が考えられた。また,SAC51の1~5番目のuORFのAUGをすべて塩基置換してもサーモスペルミン応答性は失われないが,保存されたuORF内部のAUGも合わせてすべてのAUGに変異を導入してGUSレポーター植物を作成したところ,サーモスペルミン応答性が失われることがわかった。 さらに,他の植物のSAC51ファミリーの遺伝子として,ポプラ,ダイズ,ブロッコリー由来の各遺伝子5’リーダー領域をGUSレポーターと融合してシロイヌナズナに導入した。サーモスペルミン応答性を調べた結果,応答した遺伝子にはシロイヌナズナのSAC51, SACL1同様,保存されたuORFの内部に同じ読み枠で短いuORFが存在していた。以上から,保存されたuORFの内部C末端側にある短いuORFが,サーモスペルミンによるメインORFの翻訳促進制御に関わっている可能性が示唆された。 一方,ゲノム編集によりゼニゴケMpACL5を遺伝子破壊し,サーモスペルミン合成欠損変異株を得た。葉状体の成長が遅く,雌雄とも傘の柄が短く帯化した。MpACL5は,シロイヌナズナのacl5変異表現型を相補することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サーモスペルミン応答における,シロイヌナズナのSAC51ファミリーの機能解析の結果について,予定通り論文公表することができた。また,ゲノム編集によるゼニゴケのサーモスペルミン合成酵素遺伝子破壊株を確立し,興味深い表現型を見いだすことに成功した。さらに,植物のストレス応答にサーモスペルミンが深く関わる手がかりを新たに得て,研究が進展しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
他の植物由来のSAC51ファミリー遺伝子について解析を追加し,同定した短いuORFとサーモスペルミン応答性の相関を確かめる。 サーモスペルミンの作用の分子機構は,酵母で翻訳促進の再現を試み,変異株の探索から分子遺伝学解析をすすめて,その解明を目指す。 ゼニゴケは,サーモスペルミンの標的遺伝子を同定して,作用機構の解明に迫る。
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Research Products
(7 results)