2016 Fiscal Year Annual Research Report
体細胞型から減数分裂型の細胞周期調節への切替え機構
Publicly Offered Research
Project Area | Mechanisms regulating gamete formation in animals |
Project/Area Number |
16H01257
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石黒 啓一郎 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (30508114)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 生殖細胞 / 減数分裂 / 細胞周期 / 配偶子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高等動物における体細胞増殖から減数分裂への誘導および減数分裂を制御する細胞周期調節の分子機構を明らかにすることを目的とする。配偶子形成過程において生殖細胞は通常の体細胞で見られるものと同様の細胞周期の機構を巧みに転用しながらも、減数分裂仕様に大幅に特化した仕組みと特異的な染色体構変換が与えられるようにプログラムされているがその詳細は明らかではない。 そこで本研究では、(1)Stra8 陽性の精原細胞からの減数分裂誘導のマスター制御因子の同定、 (2)減数第一分裂の pre-meiotic S 期からmeiotic prophase にかけての細胞周期制御機構を明らかにする目的で SCF および APC ユビキチンリガーゼ複合体の調節サブユニットの同定に焦点を絞って研究を行った。 まず内在性Stra8遺伝子座に精製用の3xFLAG-HAタグを導入したノックインマウス系統を作製し、その精原細胞よりStra8タンパク質複合体の精製とMS解析を行った。その結果、Stra8と相互作用していると思われる複数の因子が同定された。これとは別に、抗Stra8抗体によるaffinity精製でも同様の結果が得られた。また同様にSkp1、APC2遺伝子座に精製用のタグを導入したノックインマウス系統を作製した。精巣より精製したAPC ユビキチンリガーゼ複合体の中に、相互作用していると思われる複数の因子または基質と推定される因子が同定された。さらに解析を進めるために、これらの候補因子対する抗体を作製して免疫染色による解析の準備に着手した。また減数分裂時における表現型の解析を行う目的で、受精卵へのCrispr/Cas9導入によって新規の因子についてKOマウスを作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
内在性Stra8 遺伝子座に蛍光レポーターと精製用の3xFLAG-HAタグを導入したノックインマウスより、減数分裂にコミットした最も早い時期と思われるStra8 陽性細胞集団を効率良く集める系を確立した。まずこの系が想定通りに機能するか否かを確かめるため、ノックインマウスの精巣を分離して、クロマチン画分およびクロマチン非結合画分からStra8タンパク質の精製と会合因子のMS解析による同定を行った。その結果、Stra8に会合するクロマチン因子が複数同定されることが判明した。さらに、同定された相互作用因子の局在を調べるためにこれら対する抗体を作製した。また減数分裂に影響が見られないか表現型を解析する目的で、受精卵へのCrispr/Cas9導入によってそれらのKOマウスを作製した。
|
Strategy for Future Research Activity |
減数分裂誘導期のStra8タンパク質やmeiotic prophaseのAPC ユビキチンリガーゼ複合体と相互作用する候補因子が複数同定されたため、引き続きこれら対する抗体を作製して免疫染色による局在や発現パターンの解析を進める。また新規の因子についてはKOマウスの減数分裂時における表現型の解析を行う。いくつかの因子についてはクロマチンに結合する可能性のあるモチーフが見られるため、ChIP解析を行って減数分裂に於ける染色体上の局在の検討を行う。 細胞周期の進行に重要な基質を分解へと導くSCF E3ユビキチンリガーゼ複合体についても、精製用のタグを付加したノックインマウスの樹立を進める。精巣からこれを精製することにより、減数分裂に特異的な調節サブユニット或いはこの時期に特異的にユビキチン修飾を受ける基質タンパク質が見られないか検討する。特にこの実験では、減数第一分裂のmeiotic prophase の時期において染色体動態に影響を及ぼす細胞周期の調節因子の同定を目指す。
|