2016 Fiscal Year Annual Research Report
記憶システムの恒常性維持機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of memory dynamism elucidated from a diversity of learning systems |
Project/Area Number |
16H01265
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
殿城 亜矢子 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (90645425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インスリン / 嗅覚記憶 / ショウジョウバエ / 老化 / 脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、記憶の形成機構やインスリンシグナルによる代謝制御機構の種を超えた保存性に着目し、老化にともなう代謝恒常性の変化が記憶形成機構に与える影響を明らかにする。生体内の代謝恒常性の変化が、記憶形成に関与する神経ネットワークや分子ネットワークに与える影響を、嗅覚記憶行動解析、記憶痕跡を可視化するカルシウムイメージングやトランスクリプトーム解析を通じて評価することで、老化に伴う記憶低下が生じるメカニズムの理解に迫る。 ショウジョウバエを用いて、発生や成長の時期に影響することなく一過的にインスリンシグナルを抑制した個体を作成し、学習・記憶能を測定したところ、インスリンシグナルは記憶を維持するのに必要であることが明らかになった。また、インスリン受容体は筋肉、脂肪組織や神経細胞など様々な組織に発現しているが、その中でも脂肪組織におけるインスリン受容体の発現が記憶の維持に必要である。 ショウジョウバエでは、インスリンとインスリンによく似たインスリン様成長因子(IGF)の機能は、Dilp1からDilp8まで8種でまかなわれており、機能分担している。このうち特にDilp3が記憶の維持に必要であることが明らかとなった。このDilp3の発現は老化にともなって特異的に低下することから、老化したショウジョウバエにDilp3を過剰に発現させたところ記憶が向上することが明らかとなった。 これらのことから、若齢個体ではDilp3と脂肪組織におけるインスリンシグナルの活性化によって記憶が維持される一方で、老齢個体ではDilp3が低下することで記憶低下が引き起こされていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画に沿って、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
A)記憶の維持に必要なインスリンシグナル分子基盤の検討 インスリン受容体の下流シグナルについて、これまで既知の遺伝子群(インスリン受容体基質、PI3K、Akt等)をノックダウンさせた個体を作製する。これらの個体を用いて記憶を測定し、記憶の維持に必要なインスリンシグナル分子基盤を明らかにする。 B)生体内の代謝恒常性の変化が影響する嗅覚記憶神経系の同定 記憶痕跡をカルシウムイメージングにより可視化する手法を用いて、遺伝学的操作による代謝の変化が嗅覚記憶神経系に与える影響を明らかにする。生体内の代謝を遺伝学的操作により変化させた個体において、キノコ体神経細胞もしくはDPM神経細胞等にカルシウムインディケーターのG-CaMPを発現させる。生きたハエ個体脳内において、学習前後における神経細胞の活動変化をカルシウムイメージングにより評価する。
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