2016 Fiscal Year Annual Research Report
観察と実体験を融合する神経回路の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of memory dynamism elucidated from a diversity of learning systems |
Project/Area Number |
16H01267
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野村 洋 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (10549603)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちは、自分で体験すると共に他者の行動を観察し、観察と実体験を組み合わせて学習をする。事前の観察は、実体験による記憶形成に大きな影響を与える。観察学習に関する行動学的研究は存在するが、その神経回路についての研究は乏しい。特に、観察と実体験を統合する神経回路に関する研究はほとんど行われていない。そこで本研究では、観察と実体験を統合する神経回路の解明を目指して研究を行う。神経活動を観察するためにカルシウムイメージング法を用いた。アデノ随伴ウイルスを用いてカルシウムセンサーGCaMP6を導入した。異なる力価のアデノ随伴ウイルスを投与し、GCaMP6発現細胞の割合と細胞内のGCaMP6発現パターンを比較した。高力価のアデノ随伴ウイルスを投与した場合、多くの細胞にGCaMP6発現が観察されたが、細胞の核にも高いGCaMP発現が認められた。この場合、GCaMP6蛍光強度の変化を検出しづらい可能性が考えられる。一方、中程度の力価のアデノ随伴ウイルスを投与した場合、GCaMP6発現細胞の割合は少し低下したが、細胞質だけにGCaMP6の発現が認められた。この場合は蛍光強度の変化を大きく検出できると考えられる。さらに、アデノ随伴ウイルス投与の3-4週間後にGRINレンズをウイルス投与部位に埋め込んだ。この時、GCaMP6の蛍光を観察しながらGRINレンズを埋め込むことで、GCaMP発現部位とGRINレンズ埋め込み部位のずれをなくすことができた。さらに3-5週間後に顕微鏡を用いて個々の神経細胞のカルシウム濃度を撮影した。神経細胞の発火活動を反映したカルシウム濃度の急激な上昇が観察された。このカルシウムイメージング法によって、マウスの行動に対応した神経活動を測定することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りにカルシウムイメージングによる神経活動の測定を進めた。実際に発火活動に対応したカルシウム濃度上昇が観察された。そのため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたイメージングデータを解析し、行動に対応した神経活動を特定する。長時間の実験であるため、膨大なイメージングデータが得られる。この大規模データを解析する手法の開発も必要である。解析法の開発を進めながら実際に行動に対応した神経活動の特定を行う。
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