2016 Fiscal Year Annual Research Report
記憶の成立と移動をになう小脳神経回路の機能変化
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of memory dynamism elucidated from a diversity of learning systems |
Project/Area Number |
16H01284
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川口 真也 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (00378530)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / 可視化 / 長期抑圧 / 膜電位イメージング / 蛍光タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプス可塑性が記憶・学習に重要な役割を担うことが示されてきたが、シナプスの機能変化がいかに個々の神経細胞の入出力変換を変えるのか、いかなるシナプス可塑性の集合体が記憶をコードするのか、そして記憶の安定な長期維持を実現するメカニズムなど、シナプスの機能変化から記憶・学習に至る一連の過程には分かっていない点が多い。本研究では、運動学習の基盤と考えられている小脳のプルキンエ細胞に焦点を当てて、多くのシナプスでの可塑性がいかに統合されて細胞の入出力演算を変化させ、またその変化がどのような三次元分布で小脳に蓄積することで個々の運動学習記憶がコードされるか、について明らかにすることを目指している。 本年度は、これまでに開発してきた、プルキンエ細胞につくられる興奮性シナプスで長期抑圧とよばれるシナプス可塑性が起こった部位に集積する蛍光タンパク質と、細胞膜電位変化に応じて蛍光輝度が変化する膜電位イメージングプローブを用いて、実際にプルキンエ細胞でシナプス可塑性を光技術のみで、誘導して計測し、それを長時間にわたって標識することに成功した。従来型のパッチクランプ法を用いた電気生理学的手法では、長期抑圧の時空間分布を個々の細胞内で調べることは難しかったが、光による高い時空間制御を駆使した新しい実験手法を確立することで、神経細胞の樹状突起の中での可塑的性質の空間特性を明らかにすることができた。こうした知見は、プルキンエ細胞内でシナプス可塑性がいかに統合調節され、出力である活動電位の変化に繋がるかを理解することに繋がる有用なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた細胞膜電位イメージングプローブの高精度化を実現し、光のみを用いてシナプス可塑性を誘導してそれを検出することが可能になり、シナプス可塑性の時空間特性の解析が大きく進展した。これにより、個々の神経細胞で多くのシナプスでの可塑性が統合され、それがいかに出力変化に結び付くか、という問題に取り組む基盤が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により確立してきた、光を用いてシナプス可塑性を実時間計測する新規技術、および可塑性が起こったシナプスを長時間にわたって標識する蛍光プローブ分子について、生きたラットあるいはマウスに適用し、運動学習とプルキンエ細胞でのシナプスの可塑的変化の関係を詳細に解析したいと考えている。また、運動学習記憶の脳領域間移動のメカニズムに関して、有望な細胞レベルの変化を詳細な電気生理学的実験と膜電位イメージングを用いて探索することを計画している。
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